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平野「なんか取引先の会社の人がAで」
ミキ「マジで言ってる!?」
平野「嘘言わねーよ!」
ミキ「それで?Aは元気なわけ?」
平野「無視かよ…」
騒がしすぎるほど騒がしい。
高校の時も2人でうるさかったな…。
本人たちに悪気はないんだろうけど
一緒にいた俺と廉まで一緒に怒られて散々だったわ。
平野「スピーカーにする?」
永瀬「スピーカーにせんでも声聞こえてくる」
ミキ「勝手にそっちで話さないでよ!
ていうか永瀬も居んの!?」
「おったら悪いかよ」と廉は面倒くさそうに頭を掻きむしった。
平野「でさ…Aのことなんだけど」
電話の向こうでサトウが緊張してるのがわかる。
どう話したら1番傷つけずに済むか。
平野「A、俺らのこと覚えてないっぽかった」
それは、ストレートに言うことだった。
変な言い回しをせずに素直に言った。
…どうやらその答えは間違いだったらしい。
数秒の沈黙が部屋を走る。
やっと出てきたサトウの言葉は
ミキ「は?」
だった。
平野「かんっぜんに忘れられてた!
廉がひたすら説明してもずっとキョトン顔してんの!」
ミキ「ちょっと、冗談はやめてよ。面白くないよ」
平野「冗談じゃないんだって。マジな、話」
鼻の奥がツンとする。
泣きそうになるのを堪えていると
部屋のドアが勢いよく開いた。
部長「オマエらいつまで電話してんのかと思って聞き耳立ててりゃ私用の電話かよ!
しかもめっちゃナーバスな話じゃねえかよ!早く仕事戻れ!そういう電話は仕事終わってからやれ!」
部長だ。
頭から湯気が出てる。これはヤバイ。
カンカンだ。ヤカン沸騰するぞ。
平野「ひ、ひい!すみません!サトウ、またかけ直す!」
ミキ「ちょ、平野!」
サトウの声を無視して通話終了ボタンを迷わず押す。
ごめんサトウ。
部長怖ぇ。聞き耳立てられてたのかよ。
この時の俺たちは、
Aが俺らの記憶を失った理由を知る由もない。
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作者名:ski | 作成日時:2020年3月26日 21時