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あの時のAと違うのは、
Aの記憶。ただそれだけだ。
永瀬「あの、不躾なこと聞いてええっすか?」
「…ちょっと怖いけどええっす…なんですか?」
永瀬「元カレの名前思い出せたりします?」
廉の攻めた質問に、Aは不快な顔
ひとつせずに答えた。
「そんな、片手で数えられ程しかいたことないので
思い出せることには思い出せると思いますよ」
永瀬「嫌やなかったら教えてください!」
廉は勢いよく頭を下げた。
危な。もうそろそろテーブルにデコつくとこだった。
「そこまで頭下げられるような事じゃないですよ!?
えっと、うーんと…リョウスケとケントと…カイトとミズキとユウト…くらいです」
Aが挙げた元カレの名前の中に、
「ショウ」はなかった。
…これだけ記憶がすり変わってる中、
「ショウ」という元カレが存在してた方が怖いか。
それから、俺と廉とAが出会った経緯をもう一度聞かれ、
「バイト先で仲良くしたことがある」と言っておいた。
結構勝負に出たけどこれしか選択肢はない。
若干首を傾げられたがすぐ信じてくれた。
本当に人を疑うことを学んだ方がいい。
サトウに頼まれたから
「写真撮ってくれませんか?」とお願いすると
快く引き受けてくれた。
いくら取引先とはいえ、
悪用される可能性だってあるのに。
本当に人を傷つけることを知らない、
疑うことを知らない、純粋な子のまんまではあるんだ。
少し複雑な感情と深い疑問が心の中に芽生えた。
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作者名:ski | 作成日時:2020年3月26日 21時