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「紫色って、昔から高貴な色とか上品さ、神聖さを表す色だったんですって。…紫、私はお兄さんによく似合ってると思います。だってカッコイイですもん、お兄さん。私みたいな考えの人間は、この世界にきっと少なからずいます。いるはずです。だからあんまり、自分のこと卑下しないでください。…ご家族から頂いたピアスだって、こんなにも似合ってるんですから」

ストラップをポッケに仕舞うと、お兄さんの手を取り、渡しそびれてしまったピアスをその手に乗せる。お兄さんがもう少しだけ自分に自信が持てるように願いながら、「ね!」と念を押すように笑って見せた。

すると、お兄さんの宝石みたいな瞳に薄い水の膜が張った。目がどんどん見開かれていき、終ぞボロ、と大粒の涙を一つ溢す。
それからお兄さんが何かを言おうとしたのか、喉仏が動いたところで…丁度私のスマホが鳴った。九井さんからだった。
私は「あっ、すみません!」と一言謝ると、お兄さんの手を離し、スマホを取り出して電話に出た。名残惜しそうに「あ…」と言うお兄さんには、全く気づかずに。

「もしもし」
『あ、Aさん。悪い、今朝言ってた話の方は終わったんだが、急に外に出ることになっちまって。オフィスの方、戻って来れるか?もしかしてまだ食べてる最中とかだったか?』
「あいえ、全然大丈夫ですよ!了解です」
『本当すまねえ。…結局昼休憩いつも通りの時間になっちゃったな』
「え?…あ、ホントや。まあ全然平気ですよ!気にしないでください」
『ン。ありがとうな…●●分までに、戻って来れたりするか?』
「ハイ!大丈夫です。丁度近くにいるので、すぐそっち着くと思います」
『良かった。よろしく頼む』
「ハイ。失礼致します」

九井さんとの会話が終わり、通話を切る。そしてお兄さんの方へ振り返り、軽く会釈をした。
「すみません、急に会社戻らなくちゃいけなくなっちゃって。…ピアス、見つけられて良かったです。それじゃあまた、どこかで!」
「あっ…!」

お兄さんに手を振り急いで踵を返した私は、お兄さんの小さな声と伸ばされた腕にまたも気付かずに、その場を立ち去ったのだった。



「また…」

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Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時

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