43 ページ47
「紫色って、昔から高貴な色とか上品さ、神聖さを表す色だったんですって。…紫、私はお兄さんによく似合ってると思います。だってカッコイイですもん、お兄さん。私みたいな考えの人間は、この世界にきっと少なからずいます。いるはずです。だからあんまり、自分のこと卑下しないでください。…ご家族から頂いたピアスだって、こんなにも似合ってるんですから」
ストラップをポッケに仕舞うと、お兄さんの手を取り、渡しそびれてしまったピアスをその手に乗せる。お兄さんがもう少しだけ自分に自信が持てるように願いながら、「ね!」と念を押すように笑って見せた。
すると、お兄さんの宝石みたいな瞳に薄い水の膜が張った。目がどんどん見開かれていき、終ぞボロ、と大粒の涙を一つ溢す。
それからお兄さんが何かを言おうとしたのか、喉仏が動いたところで…丁度私のスマホが鳴った。九井さんからだった。
私は「あっ、すみません!」と一言謝ると、お兄さんの手を離し、スマホを取り出して電話に出た。名残惜しそうに「あ…」と言うお兄さんには、全く気づかずに。
「もしもし」
『あ、Aさん。悪い、今朝言ってた話の方は終わったんだが、急に外に出ることになっちまって。オフィスの方、戻って来れるか?もしかしてまだ食べてる最中とかだったか?』
「あいえ、全然大丈夫ですよ!了解です」
『本当すまねえ。…結局昼休憩いつも通りの時間になっちゃったな』
「え?…あ、ホントや。まあ全然平気ですよ!気にしないでください」
『ン。ありがとうな…●●分までに、戻って来れたりするか?』
「ハイ!大丈夫です。丁度近くにいるので、すぐそっち着くと思います」
『良かった。よろしく頼む』
「ハイ。失礼致します」
九井さんとの会話が終わり、通話を切る。そしてお兄さんの方へ振り返り、軽く会釈をした。
「すみません、急に会社戻らなくちゃいけなくなっちゃって。…ピアス、見つけられて良かったです。それじゃあまた、どこかで!」
「あっ…!」
お兄さんに手を振り急いで踵を返した私は、お兄さんの小さな声と伸ばされた腕にまたも気付かずに、その場を立ち去ったのだった。
「また…」
117人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時