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「…アイツも、お前とおんなじだった。こんなオレのこと好きだって、カッコいいって言ってくれて、」
「…」
「でも、しんだ…もういない…」
「…っ」
「…なあ、お前は、いなくなったりしない?」
肩越しに呟かれた声は、酷く弱々しく震えていた。
こんな世界だから、容姿のせいで色々酷い目にあっていたのだろう。その中でもマイキーさんの妹さんは多分、彼の心の支えだった。でもそれが目の前でなくなってしまった。…断片的なことしかわからないけれど、それでも彼の心情やトラウマを思うと胸が痛い。
だから私が彼にできるのはただ一つ。
「はい。私は、いなくなったりしません。これでも結構タフなんですよ私!…さっきがさっきやから、説得力あんまないけど…」
彼の目を見て、戯けたように笑って見せる。
マイキーさんは、少しの間目を見開いて呆然としていたけど、それからホロ、と一粒涙を流すと「はは、」と蕩けるように笑った。
「…ウン。約束、な」
「はい。…なんだか最初会った時と逆になっちゃいましたね」
「ふふ、そうだな」
「アハ…ウッ!ぃ゛!」
笑ったら激痛が。
マイキーさんはそんな私に「あ」と声を上げると背中を摩ってくれた。
顔色はまだ良くないけれど、幾分か表情が明るくなっていて、「ごめんな、怪我してんのに」と言って立ち上がり、それからまた背中を向けて屈んだ。
「え!?」
「乗って」
「で、でも。さっき…」
「…もう、大丈夫。だって、いなくなんないんだろ」
少し振り返ってそう言ったマイキーさんの顔があんまりにも安心したような顔だったから、「乗るしかないな」とまた私は背負われることとなったのだった。
——それからはマイキーさんの呼吸が乱れることも、冷や汗をかいて立ち止まることもなかった。
ホントはエレベーターを使うべきなのだろうが、と思い道すがらマイキーさんに謝る。
だが、マイキーさんも人が多く使うエレベーターよりもここの階段で移動する方が好きらしかった。よくここで買ってきたおやつ食べたりするんだって。ひんやりしてて静かだから好きらしい。
…少しの雑談しながら進んでいると、いつの間にやら26階にある九井さんと私が使っているオフィスの前に着いていた。
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Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時