【tkrv】自分の美の価値観が世の中と全然違う件

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豚事件以来、九井さんとはさらに距離が縮まったように思う。

というか、九井さんから「Aさんが今後危ない目に遭わないように」と、防犯ブザーや催涙スプレー、録音機器諸々をプレゼント？されてしまった。

はじめは見たこともない高価そうな物品たちに慄いて「いいいいや良いです大丈夫です私なんかが」と断っていたが、九井さんは「…Aさん、もしかしてああいうふうに言い寄られるの、初めてじゃないだろ。またこういうことが起きて、前よりもっと酷い事態になった時自衛の方法が手元に多くある方が良い」と諭されてしまった。

実を言うと確かに、意図しないところで誰かに異様に好かれ言い寄られることが何度かあったのだ。
田舎から上京してもう3年以上経つが、未だに都会の恐ろしさは更新されていくので、私はそろそろ都会への危機感をアップデートするべきなのかもしれない。

しかしお客さんからこんな良いものを受け取るべきなのか。と迷いに迷った末、結局ありがいことには変わりないため、九井さんの渡してくれた防犯グッズたち受け取った。それが先日のこと。


…その日のシフトは珍しく夜勤ではなく夕勤。

しかし客が多かったせいか色々と仕事が溜まりに溜まって、しかも引継ぎで来るはずのアルバイトの人が寝坊をしたとのことで私は2、3時間も残業をする羽目になっていた。本来なら0時に上がれるはずなのにね。クソが。

2時半を過ぎた頃、やっと次のシフトの人が来た。「ごめんごめん」と軽くやる気のない謝罪を受けてもそいつを殴らなかった私を、誰か偉いと褒めて欲しい。

やーっと帰れる。タイムカードを切りバックヤードへと引っ込むと、上だけ私服に着替えて早々にバックヤードから出た。

と、同時に入店音が。

ほぼ反射で自動ドアの方を向くと…

「あれ、」
「あ」

九井さんが来店していた。

九井さんは一瞬パチパチと瞬きをして固まる。それから「…Aさん？」と声を上げた。

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