そして舞台は ページ46
「うまいから桜子も食べるといい!」
その一言で、私にも渡された煉獄さんの駅弁のうちの1つ。
ローブで隠れた両手でそれを受け取って、私は弁当の中身を覗き見た。
……へぇ、この時代、炭火焼きビーフとかあるんだ。それに焼き鮭も入ってる。
とっても美味しそうだし大好きなんだけど、きっとこれも味が無いんだろうな……
そう思いながら蓋を開けて箸を割り、既に2食目に入っていた煉獄さんに釣られるように、私も弁当を食べ始めた。
「あの…すみません」
炭次郎が声を掛けてきたのは、一周回って奇妙で未知な味のする炭火焼きビーフを齧っていた時だった。
聞き覚えのある声かつ聞き覚えのあるフレーズに顔を上げて、そこにいる人の姿を見た途端、私は思わずビーフを喉に詰らせた。
「た、んっぐ…!?」
「えっ、桜子さん…?うわ、大丈夫ですか桜子さん!?すみません驚かせてしまって!」
「え!?これ桜子さん…?全身布で覆われてて気付かなかった…」
激しく咳き込む私に炭次郎と誰かが何か言ったけど、全く聞き取れなかった。
そうだ、炭次郎達来るんだったね……一瞬忘れかけてた……
「だ、だい……大丈夫。えっと、炭次郎達は任務で…?」
「はい!その為に煉獄さんと………あっ、煉獄さん、その前に1つお聞きしたいことが…」
あ、これ質問来る…
そう思って、のそりと席を立ち上がり、通路を挟んで反対側の席へそそくさと移動する私。
軽く咳き込みながら座り直すと、ふと前に影が掛かった。
「桜子さん、水…」
「え?あ、水……ありがとう」
どこから貰ってきたのか、透明なコップを恐る恐ると差し出して来た善逸に礼を言って、それを受け取る。
ありがたな…あ待ってこの水美味しくない、味のない水美味しくない。
「お前が千一と権兵衛の言ってた女か!なんだ、弱っちそうだな!」
「弱くて悪かったね」
伊之助も全くブレなかった。予想通り、名前を間違えた上で貶してきた。
善逸に咎められながら向かいに座る2人を眺めながら、私は反対側で神楽の説明をしている炭次郎へ目を向けた。
その横、窓際には当たり前のように木箱が置かれている。禰豆子ちゃん………実際に見てみたいな。
「あの…桜子さん、この前は大丈夫だったんですか?」
「え、この前…?あぁあの時…大丈夫だよ、睡眠不足なだけだったから」
___そう言った途端、列車が音を立てて静かに動き始めた。
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楓音(プロフ) - 作品とても楽しく読ませて頂いています!初の登場時からずっと気になっていたのですが、「炭治郎」を「炭次郎」と書き間違えていたのが気になってご報告させて頂きました💦ご不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません💦 (2022年3月22日 18時) (レス) @page6 id: 5a612b3e43 (このIDを非表示/違反報告)
むい推しの人 - 初コメです〜。一つ気になったことがありまして…。「連れていく」で登場した夢主ちゃんの服のことです。膝上の短い袴ってどんなやつですか?変に細かいところ気になってしまいました…すみません。長文コメ失礼しました! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 00103e9837 (このIDを非表示/違反報告)
風雅(プロフ) - 初コメ失礼します。無惨の名を言うと殺されるという呪いは発動しないのですか?無惨に限って例外はないような気がするので。今後の展開が気になります!更新頑張ってください! (2019年9月3日 21時) (レス) id: 0b2ef933c6 (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 14ページ目、悲鳴島ではなく悲鳴嶼だと思います.......物語は面白いので、更新頑張ってください! (2019年8月30日 2時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - オチを宇髄さんに一票! (2019年8月27日 18時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年8月22日 20時