それしかない ページ32
そう言うと、宇髄さんは……僅かに目を見開いて、私を見た。
あまり表情の変化がないその目に、動揺か驚きの色が過ぎって、すぐ隠れた。
「…それは、お前………」
何かに気付いたように呟いた宇髄さんが、片手を持ち上げて私を指差す。
………つい、勢いで「食べてない」と言ってしまったけど、本当にそうなのかは分からない。
誰も食べてないと思いたいけど、空腹になったら流石に自信が持てない……
というか、鬼殺隊でそうなった場合、柱に即首を斬られるのか…??
いや心が耐えられないわ多分そうなったら。推しに憎まれながら殺されるとか、無理かもしれない。
そうなった時相手が宇髄さんか色黒さん辺りだったら、無惨様のこと来世でも恨むからな…!
「あーでも、食べてないって言っても、記憶の範囲だし……私は他の鬼と違って、睡眠とか普通の食事が取れるから、それで補って……」
内心ドキドキパラダイスを開催しながら、動揺を悟られないようにペラペラと喋っていく。
宇髄さん、何であんた何にも反応してくれないんだよ。
……が、そう言うと、宇髄さんは「は?」と低い声を漏らした。
アッ善逸と並んで汚い低音って言われてる人だった、「は」一言の圧がヤバい…!
そろそろ立とうと思ったのに、また立てなくなってしまった。
「派手に本当か?」
「は、派手に本当」
派手に本当、って何?
そう思っても言わないままにすると、宇髄さんは「ふぅん」と顎を上げた。
「じゃあ今すぐ寝ろ」
「……え?」
次に発せられた言葉に、私が「え」と声を上げた瞬間___
ヒュッ、と風が動く音がして、
「柱は明日には其々の持ち場に戻る。お前のことは……____」
___自分が、いつの間にか布団の中に寝ていた。毛布まで被っている。
「えっ!?え?…………え?えっ」
状況が分からず、咄嗟に飛び起きると……昼に見た、自分の部屋。
襖は閉じられていて、宇髄さんの姿も……どこにも無い、音も圧も無かった。
「……うそでしょ、気付かないくらい速」
忍の本気ってこれくらい出来るのか……と漫画ばりの瞬間移動を実体験して、私はほええと魂が抜けかけた。
寝ろ、って…急すぎない、色々と。何なんだあの人頭の中派手で詰まってる……
理解が追いつかないまま、とりあえず枕の上に倒れ込んで、無言になって天井を見つめる。
私はこれから……色んな意味で、ここで生きていけるのか。
つい考え込むと、約3時間くらい安眠に就けなかった。
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楓音(プロフ) - 作品とても楽しく読ませて頂いています!初の登場時からずっと気になっていたのですが、「炭治郎」を「炭次郎」と書き間違えていたのが気になってご報告させて頂きました💦ご不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません💦 (2022年3月22日 18時) (レス) @page6 id: 5a612b3e43 (このIDを非表示/違反報告)
むい推しの人 - 初コメです〜。一つ気になったことがありまして…。「連れていく」で登場した夢主ちゃんの服のことです。膝上の短い袴ってどんなやつですか?変に細かいところ気になってしまいました…すみません。長文コメ失礼しました! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 00103e9837 (このIDを非表示/違反報告)
風雅(プロフ) - 初コメ失礼します。無惨の名を言うと殺されるという呪いは発動しないのですか?無惨に限って例外はないような気がするので。今後の展開が気になります!更新頑張ってください! (2019年9月3日 21時) (レス) id: 0b2ef933c6 (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 14ページ目、悲鳴島ではなく悲鳴嶼だと思います.......物語は面白いので、更新頑張ってください! (2019年8月30日 2時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - オチを宇髄さんに一票! (2019年8月27日 18時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年8月22日 20時