鬼舞辻無惨を殴るまで【鬼滅の刃】

気まずいの二乗 ページ4

「お、俺だよ！昔すっごい世話になった…ほら、借金取りからじいちゃんと助けてくれた！」

「あっでもあの頃とは髪色違うけど……我妻善逸だよ！」

「桜子さんを追いかけて鬼殺隊に入ったんだけど、桜子さんいなくて……お、鬼になっちゃってたなんて……」




泣き出しそうな顔で、そう捲し立てる善逸を、私は困惑の目で見つめる。


そんなの初めて聞いた。


私はついさっき“トリップ”したばかりなのに、何故か急に善逸君と接点が出来てるぞ……？？


「えーっと、失礼ですが、人違いでは…？」


とても気まずいかつ申し訳ない気持ちで恐る恐る聞いてみると、善逸は「違わない！」とムキになったよう叫ぶ。


「なっ名前はなんて言うんだよぅ！」


よぅ、って…ぐうかわかよ。じゃなくて…


「……天宮桜子だけど…」

「同じだよーッ！桜子さんと同じだよ！名前も顔も、せ、背丈も！なのに記憶無くてしかも鬼なんて…！？」




「そ、それに……こんなに沢山の隊士を、ひ1人で返り血すら浴びず殺しちゃうなんて…」




引き腰のままの善逸が指さしたのは、私の四方……無残にも息絶えた鬼殺隊の人達だ。


木々の下に転がる人や、枝の上まで吹き飛ばされたような人、10人以上はいる。


誰も皆、五体が欠損していたり酷い傷があったり………




「いや、流石に、ここまで酷いことは出来ないと思う……私そんな力無いし」


「そもそも…多分これをやったのは鬼舞辻無惨で、私もさっきまでそいつに追われてて一回殺されて、今に至るし…」


「だ、誰も殺してないからね…？今正に、鬼になった自分に絶望して誰かに首を刎ねてもらおうと……」




と、今度はあらぬ誤解を受けた私が弁解をしようとしたところ、


「そんな…！？駄目駄目！絶対それは駄目！自分から死ぬなんて、止めてよ！！」


自害を阻止しようとしたのか、あろうことか善逸が飛ぶような速さで私に飛び付いてきた。


「！？わッ…ちょっ、ぜ、善逸…！？私仮にも鬼んだけど…！？」


咄嗟のことに驚いて、腰に手を回して蹲る善逸を引き剥がそうとするも……


「ちょ、え？思ってたより力強ッ」

「止めてぇ！禰豆子ちゃんみたいに、人を襲わないって証明すれば鬼殺隊にも認められるからぁぁ」


いやそれは“2年間誰も襲わなかった”上に“冨岡さんと鱗滝さんのお墨付き”という特例なのであって……




「___あぁもう分かった！！死なないから！取り敢えず鬼殺隊に話付けておいで！？！」

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