誰もが口にしない ページ14
___天宮桜子、という名前の少女。
その名と姿を知らない者は、今代の柱の中で誰もいないだろう。
「………しかし、お館様の判断もあれで良かったのかよ」
誰に言う訳でもないが、ポツリとそう呟いたのは………風柱、不死川実弥だ。
柱合会議が終わった後、お館様が去った後でもその場を動かない俺達は、
「…………………」
その呟きを聞いて、各々が考えを巡らせてしまう。
そうだ、確かに鈴木桜子は鬼だ……本来なら、処罰すべきだった。
彼女には、竈門禰豆子のように“人を襲わない実証”も“人を守る証拠”も無かったのだから………
俺は彼女の頸を斬るなんて……それこそお館様の命であろうとも出来っこないが、他の奴なら斬れた。
それでも、誰もが口にせずとも存命を願ったのは____
「また………会えただけでも、良かったんじゃないか」
沈黙する空気に発せられたその声の主は、全員から背を向けていて表情は分からなかった。
声もいつもと変わりなく、喜びも落胆もない、ただ呟いただけの声。
…………それでも、俺には分かった。
この“男”が、どれだけ複雑な感情の嵐に打たれているか。
それはそうだろう。俺が知る限り、最も“桜子に近しかった”奴だ。
長年探し続けても見つからなかった人が、自分の敵である鬼に身を落とされて戻って来た、その重みが分かる。
「…まぁ、とりあえず自分の仕事に戻りましょうよ。会いたいのならいつでも会えるんですしね」
ふとそう呟いて、一番最初に踵を返したのは、胡蝶だった。
「会いたいのならいつでも会える、か……そうだな」
正直、奥の部屋にいる筈の桜子が気にならない訳ではなかった……が、
アイツが鬼の狂気に飲まれる事はないだろう、と……どこかで不思議に信じてしまう。
蝶の羽織を翻して去って行く胡蝶に続くと、不死川や悲鳴嶼さんもそれに続いた。
………桜子。
それでも、他でもないお前が生きていた事は何よりも嬉しかった。
例えお前が“鬼”になってしまったとしても。人を、食ってしまっていたとしても。
記憶を全て無くし、俺達や過去のことを何も覚えていないとしても。
「___ようやく、おかえり、と言えるんだな」
(誤字訂正しました。何度もすみません…)
1124人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
楓音(プロフ) - 作品とても楽しく読ませて頂いています!初の登場時からずっと気になっていたのですが、「炭治郎」を「炭次郎」と書き間違えていたのが気になってご報告させて頂きました💦ご不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません💦 (2022年3月22日 18時) (レス) @page6 id: 5a612b3e43 (このIDを非表示/違反報告)
むい推しの人 - 初コメです〜。一つ気になったことがありまして…。「連れていく」で登場した夢主ちゃんの服のことです。膝上の短い袴ってどんなやつですか?変に細かいところ気になってしまいました…すみません。長文コメ失礼しました! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 00103e9837 (このIDを非表示/違反報告)
風雅(プロフ) - 初コメ失礼します。無惨の名を言うと殺されるという呪いは発動しないのですか?無惨に限って例外はないような気がするので。今後の展開が気になります!更新頑張ってください! (2019年9月3日 21時) (レス) id: 0b2ef933c6 (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 14ページ目、悲鳴島ではなく悲鳴嶼だと思います.......物語は面白いので、更新頑張ってください! (2019年8月30日 2時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - オチを宇髄さんに一票! (2019年8月27日 18時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年8月22日 20時