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「あ、ユンギヒョンそれ」
ジョングクが俺に話しかけた気がするが、無視して俺は目の前の鍵盤を見つめ続ける。記憶を頼りに、一音一音確かめるように鳴らしていく。
今日も朝から撮影だった。セットに置いてあったピアノを触ってもいいと許可を得たので、気まぐれに弾いていた。その時ふと、Aが奏でていたピアノの曲を思い出して、気付いたら指が動いていた。何度も何度も聴いたので脳は覚えていて、意外とすんなり指が動く。
「ユンギヒョン」
「うるせぇ。今頭フル回転してんだ、少し黙ってろ」
「えー?」
「どうしたの?」
「ユンギヒョンが弾いてるピアノ聞き覚えがあって」
「そうなの?僕、全然知らないや」
「俺も知ってる曲じゃないんですけど…確かユンギヒョンが鼻歌で歌ってたような」
「あぁこの前言ってた?」
「はい」
後ろでジョングクとジミンが話しているのが聞こえてくる。俺ってそんなにAの曲口ずさんでたか?まぁでも耳から離れないのは確かか。
何をやっていてもAの声が思い出され、Aを感じたくて、気付いたらこうやってなにかしらAの奏でる曲を再現している。
「あーもうお前ら後ろでうるせえよ。集中できないじゃねぇか」
「ヒョン!それってこの前歌ってたのだよね?タイトル知らないって言ってた」
集中できなくなって後ろで騒いでる2人に言えば、ジョングクが飛んできた。
「知らないのに弾けるんだ!ヒョンどんだけ好きなの?」
「耳から離れないだよ」
「ヒョンが全部弾けるようになったら聞きたいな〜それだけユンギヒョンの耳に残ってる曲、僕も気になる」
「いい曲だよ」
「ユンギヒョン本当に好きなんだね」
ジミンにしみじみと言われてなんだか恥ずかしくなった。自分では分かってたことだが、人に言われるのでは違うんだな。俺、どれだけAのこと考えてたんだか。いつのまにか俺の中でAの存在が大きくなっている。
まだAのことは全然知らないのに。Aが奏でる曲と、綺麗な声、そしてあの笑顔。それだけで俺はすっかりAの虜ってこと。何度目か分からないAへの想いの自覚に、静かに笑う。俺、やっぱり最近女々しいわ。
「またユンギヒョン笑ってる…」
「グクが言ってたのこれだったんだね」
「アミの前以外で笑ってるの珍しいですよね」
「そうだね。それだけ良い曲なんだろうね」
「ユンギヒョンを変えた曲、俺も聴きたいな〜」
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時