【YG】キミと奏でるメロディー

＃08 ページ8

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辿り着いた先は誰も居なかった。やっぱり雨の日だと外に出ることもないのか。

そう思ったが、遠くで子どもの楽しそうな声が聞こえてきた。柵に近付いて奥の方を見てみれば、かっぱを着て、長靴を履いて、水たまりに飛び込んで遊んでいる子どもたちがいた。その傍に同じようにかっぱを着ている女がいることに気付き、Aだろうかと目凝らして見る。遠くて顔を識別できないが、雰囲気や動きでAではないことが感覚で分かり、落胆する。


今日は外にいないのか。


帰るか、と踵を返そうとしたら名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「ユンギさん？」


振り返れば、傘をさして驚いた顔をしているAの姿があった。


「A…」

「ユンギさん、どうしたんですか？今日もお仕事ですか？」

「あぁ。雨で中止になったから、来てみた」

「雨、本降りになってしまいましたね。小雨だったので子どもたちを外で遊ばせてたんですけど、そろそろ部屋の中に入れようと思っていたところだったんです」


そうは言うが、Aの周りには子どもがいなかった。そんな俺の疑問に気付いたのか、苦笑しながらAが口を開く。


「部屋に戻ろうと言ったら、嫌だって逃げられちゃったんです。みんなオンニの方に行っちゃいました」

「あぁそこにいる…」

「はい。だから傘取りに戻って、遠くに子どもたちが来てないか見て回ってたんです。そしたらユンギさんが立っていたので驚きました。長いこと居たんですか？」

「いや、来たばかりだ。Aの姿が見当たらなかったから、帰ろうと思ってたところ」

「じゃあ丁度いいタイミングだったんですね」


そう言ってふんわりと笑うAを見て、あぁこの笑顔が見たかったんだと、俺も自然と笑顔になるのが分かった。


「今日は生憎の雨なのでピアノはお届けできないです」

「Aの顔見れただけでいいよ」

「え？」

「それだけで十分」

「そ、それだけでいいんですか？わたしなんかで？」

「なんかじゃない。Aだからいいの」

「はい…」


恥ずかしそうに小さく返事するAの姿がまたいじらしくて、あぁ触れたいななんて思いが溢れる。


「わたしもユンギさんに会えて良かったです。最近会えなかったので…今日は朝から雨だったから絶対に会えないと思っていたんです」


あぁなんでそんな俺を喜ばせることばかり言うのか。同じ気持ちなんじゃないかって勘違いするだろ。


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