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「Aちゃん、今から買い物に行くんだけど、手伝ってもらっていいかしら?」
小さい子たちの昼寝の時間。寝かしつけていたわたしの元へシスターがやって来た。この孤児院はシスターが2人、神父さんが1人いて。そしてわたしのようなお手伝いをしている人が何人か居る。わたしみたいにここで過ごしたわけではないが親を亡くして悲しい思いをした人が多い。この孤児院にいる子たちの気持ちが痛いほど分かるからだろう。
そしてシスターは定期的に都心に買い物に出かける。こんな田舎だとなかかな手に入らない物があるので決まった日に出かけて大量に購入するのだ。
都心に出るのは久しぶりだったので快く承諾して出かける準備をする。自分の買い物をするわけではないのに、都心に買い物に行く時にわくわくするのはなんでだろうか。
「あれもこれもって思ったらやっぱりいっぱいになっちゃうわね」
「仕方ないですね。久しぶりのお買い物ですから」
「すぐに必要ないものは郵送しましょうか」
「はい」
2人して両手いっぱいに買い物袋をぶら下げて更にカートも押して歩く。都心に買い物に出るといつもそうだったのでもう慣れたが重たいことには変わりない。
シスターと一緒に荷物を預けて郵送手続きをとってもらう。少し身軽になって歩いていると遠目に人だかりができていることに気付いた。
「なにかあったのかしら…?」
都心と言えど一ヵ所にすごい人だかりになっていることはない。事故かなにかあったのかと不安になったが、すぐに違うことに気付く。
「なにかの撮影…かしら?」
シスターの言う通り遠目だがカメラがあることが分かった。そして黄色い歓声が微かに聞こえてくる。
「ファン、かしら?すごいわね、歓声が」
「はい。すごい人だかりですもんね。なんの撮影しているんでしょうね?」
「通り道だから近付けば分かるわよ」
ふふふ、と心なしか楽しそうなシスターの様子に、そう言えば近くで撮影とかしていたりしても、いち早く気付くのはこのシスターだなって思い出した。見た目に反してだいぶミーハーなのだ。
近付くにつれ黄色い歓声も大きくなっていく。その時、人だかりの向こうのスペースにいる人がチラリと見えた。一瞬だったけど見覚えがある感じがして驚いた。歩きながら目を凝らしてじっと見る。
ユンギ、さん…?
初めて会った時と違って派手な髪色をしているわけではないがあれはユンギさんだと思う。
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時