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「普段はちゃんと寝れない。不眠症…のようなもんだと思う。寝れても必ず目が覚めたり、寝れるまでに時間がかかるし」
静かに話すユンギさんの言葉を、わたしは黙って聞いていた。
「でも今日Aの傍だとちゃんと寝れた。短い時間だったけど、久しぶりにぐっすり寝れたんだ。同じようにAと会った日もよく寝れる。一度も目が覚めることなく、朝までちゃんと寝れてた」
「…わたしが電話口で歌った時も、朝まで起きることなく寝れましたか?」
「よく寝れた。途中で寝たことも起きるまで気付かないぐらい」
「やっぱり子守唄だったんですね」
前、送り合ったやり取りを思い出して笑えば、ユンギさんは面白くなさそうな顔をしていた。
「だから俺は赤ちゃんじゃない」
「でも普段、寝れないっていうメッセージもらっていたので…よく寝れたのなら嬉しいです」
「うん。なんだろうな…Aの雰囲気がすごく安らぐ。安心するんだ」
「じゃあやっぱりこれからも歌ってあげますね」
ふざけたようにそう言えば、今度は真剣な顔をするユンギさん。その表情にわたしはどきりとしてしまった。
「このままAを掻っ攫って俺の部屋に閉じ込めておきたい。帰ってきたらAがいれば安心して寝れる」
真剣にそんなことを言われて恥ずかしい。でもユンギさんは真面目にそう思っているようだった。
「電話してください。出れないこともあるかもしれませんが、出れるときはわたしの声を聴かせますから」
だから茶化すことなく笑うことなくわたしも真面目に答える。
「声でも十分だけど、ほんとはこうやってAの温もりが欲しいんだよな…」
そう言って立ち上がったユンギさんは座ったままのわたしを強く抱きしめた。
「ゆ、ゆんぎさん…」
「だめ?」
「だめ、というか…」
「なに?」
「その、驚きとか、恥ずかしさとかがあります…」
「でも俺はずっとAの温もりを感じたかった」
いつも以上のストレートな気持ちに戸惑う。嫌悪感とかはないけれど、心臓はどきどきと煩くて。恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時