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いつもと違ったのは、ユンギさんからのメッセージが事前にきていたこと。
「今日、絶対に行くから」
それだけの短いメッセージだったけど、ちょうど手が空いた時に気付くことができて、わたしはそれからそわそわしていた。
また久しぶりにユンギさんに会える。ずっと次はいつかなって思っていたけれど、こうやって事前に分かるのは嬉しい。
全ての仕事を終えて自分の部屋で一息ついていると、ノック音が響いた。わたしの家に来る人は限られている。でもこの時間帯にくるのは連絡をくれたユンギさんしかいない。
そう思って早足で玄関へ行き、注意されてから閉じるようにしていた鍵を開ければ、わたしが開くより先に扉が開いた。
そしてわたしはユンギさんの顔を見る間もなく彼の匂いに包まれた。抱きしめられていると気付いたのは少し経ってからだった。
強く、強く、ユンギさんの腕がわたしの体を抱きしめている。ユンギさんの顔を見ようと首を動かせば、更に強い力で抱きしめられた。
こんなことは初めてで、まさか抱きしめられるとは思ってもいなく、心臓がどきどきと煩い。この音がユンギさんに聞かれてしまわないかと心配になる。でもわたしも恐る恐るユンギさんの背中に手を回し抱きしめ返した。
なんでだろう。抱きしめてあげたい、なんてそんなことを思った。
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どれくらいそうやって抱きしめられたままだっただろうか。ユンギさんは一言も話さなかった。
「ユンギさん…?」
「ん」
耐えきれなくなって彼の名前を呼んでも小さく返事をするのみ。顔も見れなくてユンギさんがどんな表情をしているか気になった。でもわたしを抱きしめるユンギさんの体重がどんどんわたしに圧し掛かってくる。
「ユンギさん?」
もう一度彼の名前を呼べば同じように小さく返事をするだけ。でもなんだか声が先ほどより掠れているような…
「あ、あのユンギさん。玄関にいるのもなんですから、中に入りませんか?」
「A」
わたしの言葉を聞いているのか聞いていないのか。短くわたしの名前を呼ぶ。それに返事をすれば。
「会いたかった」
掠れた声でそっとユンギさんが口にした。それにどきりとして固まっていたら、わたしを抱きしめたまま歩き出すユンギさん。後ろ向きでうまく歩けないわたしを抱えるようにして、部屋の中に入っていった。
多分、位置的に机と椅子だろうだけど、そこにわたしの背中が当たりそのまま床に崩れ落ちた。
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時