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「明日もお仕事なんですよね?今日は帰って、また来てください」
「次、いつ来れるか分からないじゃん」
「わたしは毎日待ってますから」
「…俺の帰る場所がここだったらいいのに」
「今日のユンギさんは、いじわるだったのに…」
「いじわるだった?」
「少しいじわるでした。わたしが分からないのを楽しんだり、恥ずかしがってるのを楽しんだり」
「それはいつものことだろ」
即答すれば、またむぅとむくれるAに再び笑えば「やっぱりいじわるですよ」と拗ねた。
「いじわるより、さっきみたいに甘えてくれたほうがいいですね」
「じゃあここに居ていい?」
「それはだめです」
「甘えてくれたほうがいいって言ったじゃん」
「それとこれは別ですよ。こんなに遅くまで仕事があるほど忙しいんですよね?ちゃんとお家で休んでください」
「俺の疲れはAの笑顔で癒されるんだけど」
「もう、そんなことばっかり言わないでください」
「冗談じゃないのに。まぁいいや。次来た時に、思いっきり甘やかしてもらうから」
「なんだかユンギさん、ぐいぐいきますね」
「甘えていいって言ったし、俺のこと知りたいんだろ?」
「知りたいですよ。甘えたなユンギさんが本性ですか?」
楽しそうに笑うAはきっと今の俺の言葉も戯言だと思ってて、あまり本気に捉えてないのだろう。俺の言葉が本気だって分かってたら多分照れる筈だから。なんだかそれも悔しいなって思うけど今はこのままでいい。少しずつ俺のこと分かってもらえれば。
口に出したように本当に帰りたくはなかったけど、Aの言う通りそういうわけにはいかないから。後ろ髪を引かれる思いでAの家を後にした。
でも今日は少しAに近付けたかなって思えて。家に入れてくれたことが嬉しかった。疲れている筈だったのに宿舎に着いても心は穏やかで。Aの柔らかい雰囲気がまだ残っていて、いつもは寝付きが悪いのに今日はベッドに横になればすぐに眠りにつくことができた。
朝になって起きるまで一度も目が覚めずにぐっすり寝れていた自分に驚いた。
あぁ本当に…毎日でもAに会えたらいいのに。こんなに俺に安らぎを与えてくれる存在はAだけ。疲れきって干からびそうな俺に、潤いを与えてくれる存在。
「Aに会いたい…」
ぽつりと漏れた言葉に苦笑する。
やっぱり俺は最近、女々しいな。
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時