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「芸能人としてのユンギさんは知りませんけど、売れっ子なんですね。会えなかった1ヵ月、ずっとお仕事されてたんですか?」
「そうだな。もともと休みなんてほとんどない」
「お疲れ様です。少しは癒されましたか?」
「Aに会えば癒されるよ」
「え…」
「Aは本当に自分で聞いておいて驚くよな」
「だってユンギさんいつも即答するから」
照れて恥ずかしそうにしているAを見て俺は笑う。そうすれば「笑わないでください」ってむくれる。あぁ本当にAと会えば癒される。その思いは本当だった。
Aも自分の分のジンジャーミルクも持って来てほっと一息ついている。そのAの後ろにピアノがあることに気付いた。
「ピアノ…」
「あ、はい。両親に習わせてもらっていて、ピアノだけは持って来させてもらったんです」
「へぇ、ずっと習ってたのか?」
「はい。両親が亡くなるまでずっと」
「じゃあいつも弾いてるのは、両親から教えてもらった曲なのか?」
「両親…というか、カトリックだったのでミサで教会に行くたびに、パイプオルガンを弾かせてもらっていて。それで讃美歌とか聖歌とか弾くようになったんです」
「じゃあその頃の記憶で弾いてるのか」
「そうですね。小さいころから繰り返し聞いていたし、歌っていて、見よう見まねで弾いていたんです。だから曖昧なところもあって、勝手にアレンジしてみたり…ユンギさんに聞いてもらった曲は楽譜を見たことがないんです」
「音感がいいんだな。自分でアレンジしてまで弾けるのは相当な実力だよ」
「やっぱりユンギさんってわたしを褒め殺しにしますよね」
相変わらず恥ずかしそうにしていて、ごまかすようにジンジャーミルクを口に含んでいた。かと思えば、ハッとしたように俺の顔を見る。
「ユンギさんって音楽関係の人ですか?歌手とか?」
「なんでそう思ったんだ?」
「音楽に詳しそうですし、曲を聴いてる時が一番楽しそうにしてますよ。一緒に歌いたいのかなって思うこともありますし」
「俺の気持ち駄々漏れだった?」
「駄々漏れでした。音楽好きなんですね」
「そうだな。1日中音楽と関わってたいと思う」
「じゃあやっぱり」
「さあね」
Aの言葉を遮るようにニヤリと笑って言う。
「違うんですか?」
「ただの趣味かもしれないだろ?」
「ユンギさんって意外と意地悪ですね」
「今更気付いたか?」
楽しそうに笑う俺と違いAは頬を膨らませていた。
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時