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全部繋がった。漸く点と点が1本の線になった。
事故に遭ったのは事実だけど、それは今じゃない。もうずっと前の話。そこでわたしはジョングクのことを忘れてしまったのだ。
だから記憶が2つあるんだ。わたしが2人いるみたいに感じたんだ。
始めから意識ははっきりしていたけれど。これが夢の中だって理解していたけれど。状況を理解して靄が晴れたような気がした。よりはっきりした。ふわふわとしていたのが、地に足着いた感じみたい。
後は夢から覚めるだけ。でもどうやったら覚めるんだろう。夢の中っていうのは分かるんだけど、なんだか寝ているとのも違う気がして。こんなに意識がはっきりしているからかな。起きるってどうやってやるんだろう。今まで当たり前に自然と出来ていたことが分からない。
「好きだよ、A。どんなAだって愛してる」
どこからともなく大好きな声が聞こえてきた気がする。ジョングクの声だ。そこにいるの?ねぇわたしも好きだよ。わたしだってどんなあなただって愛してる。それを言いたいのに。口にしてる筈なのに声にならない。夢だから?どうしたら伝えられる?どうやったらこの夢から覚めるの。
ジョングクの声を頼りに彼に意識を寄せる。そこにジョングクがいるんだって思って必死に近付こうとする。ああなんだか、出口が見えた気がする。
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「っ…え、…」
パチッと効果音が付きそうなぐらい勢いよく瞳が開いた気がする。さっきまでの夢の中と意識が混ざり合っていてよく分からないけど、夢から覚めたってことでいいんだよね?そう思って体を起こそうとしたら、お腹の辺りが重たくて起き上がれなかった。
「ジョングク…?」
お腹の重さはジョングクがわたしに頭を乗せて寝ていたからで。なんでいるんだろうって思って周りを見渡せば、まだ戸惑う。真っ白な空間で、真っ白なベッド。見た感じ病院みたいだった。あれ、わたし事故に遭ったけど無事に退院できたんじゃなかったっけ。
混乱する記憶を巡っていれば、ああそっかと気付く。目の前で事故を見て。そして勢いよく今まで思い出せなかった記憶が一気に脳を駆け巡って思い出すことができて。でも酷く頭が痛んで、そのまま立っていることができなかったんだ。それで倒れたんだろうか。ジョングクが病院に運んでくれたのかな。
ジョングクの頭を支えて、そっと起き上って。そのままさらりと綺麗な髪を撫でる。
「ありがとう、助けてくれて」
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セナ - まさかの記憶喪失だったという展開にとても驚かされました...!!!次回作も楽しみにしております(*^^*) (2021年8月11日 12時) (レス) id: 1946a1a89c (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ゆうりさん» ありがとうございます!こちらこそ嬉しいお言葉を頂けて感謝でいっぱいです。ぜひぜひ、次回作もお付き合い頂けたらと思います。 (2019年2月27日 19時) (レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます!毎回みき様の素敵なお言葉に癒されておりました。タイトル通りひたすら優しさを漂わせていたお話だったのでそう言っていただけて嬉しいです。もし機会があれば書いてみたいと思います。 (2019年2月27日 19時) (レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうり(プロフ) - 完結お疲れ様でした!!!とても好みの話でいつも楽しみに待っていました!次回作も時間がありましたら待っていますのでどうぞよろしくお願いしますm(__)m最後まで楽しませてくださってありがとうございました! (2019年2月25日 14時) (レス) id: 5e5d1321e9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完結お疲れ様でした。悪い人がいないとてもしあわせな話でした。この2人のしあわせな姿をずっと読み続けたいし、事故に遭う前の2人のしあわせな話も読んでみたいです。いつも更新楽しみにしていました。ありがとうございました。 (2019年2月25日 12時) (レス) id: cd9810eca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2019年2月20日 20時