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こんなところにアルコールは用意されていないだろうに、先輩は一見酔っ払いみたいになっていた。
「もーおそいよ!ばか!」
先輩は起き上がって、飲みかけのコーラをぐびっと飲んだ。
仕方がないから向かいに腰掛けた。
「ごめんなさい」
なんでそっちが急に呼んだのに、こちらが謝らなくちゃいけないんだ。
ハッとした。
自然と謝ってしまうってこういうことか。
Aに偉そうなことをいって、自分が悪くないことで謝ってるじゃないか。
先輩は、俺が謝ったのなんて気にもせずに、
いまコーラを飲み干したようだった。
カランと涼しげな音がする。
「……なんでグク、すぐに来てくれなかったの?」
少し目線を下げて、長いまつげをパタパタさせながら口を開いた。
「……学校、で課題終わってなくて、」
一瞬先輩がAに見えて、動揺した。
逆バージョンもあるのか。なんだこれ。
「うそつき〜」
先輩はそう言ってふふふって笑った。
「え?」
すぐにバレるなんて
おれは嘘をつくのがヘタなんですか?
「カノジョ、のとこ行ってたでしょー」
「……なんで」
なんで知ってるの?
「この前、たまたま見ちゃったんだ。デートしてるとこ。」
飲み物をアイスティーに変えた先輩は、ストローでくるくると中をまわしている。
「…………行ってましたよ、彼女のとこ」
「なにか、悪いですか?彼女とデートして」
真顔で、自分なりに仕掛けたつもりだった。
そんなおれを見て、また先輩は綺麗に笑うのだった。
「べつにー?悪くないけど?」
「……けど、なんですか」
「んーん。グクって、ほんとに私のこと好きだよねえ」
鼻をツンって人差し指でつつかれる。
……仕掛けられたのは俺の方だった。
「相手の子、わたしにそっくりだったからびっくりしちゃった」
「………………」
「いや、わたしよりも、わたしの妹の生きうつしみたいだった」
……はい?
「ていうか、それ、わたしの妹じゃんって(笑)
なにー?知ってて付き合ってんのー?」
……どうりで、似てるはずだ。
思考が働くのを辞めてしまったのか、
そんな小学生みたいな感想しか頭には浮かばなかった。
『うちのお姉ちゃん、お姫様症候群なんだよね』
ほんとに、その通りだ。
しばらく、言葉も出なかった。
* * *
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月野(プロフ) - ふゆさん» ありがとうございます。ドキドキハラハラ四角関係?みたいなのとはすこし違いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです(^_^) (2018年11月17日 12時) (レス) id: a5e5b03616 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - テテくんの登場にドキドキです。続き楽しみにしています! (2018年11月10日 14時) (レス) id: 8d7e35afef (このIDを非表示/違反報告)
月野(プロフ) - 里珠さん» 読んでくださりありがとうございます!続き書くの遅くて申し訳ないです…できるだけ頑張ります〜! (2018年10月23日 16時) (レス) id: a5e5b03616 (このIDを非表示/違反報告)
月野(プロフ) - もぐらさん» 読んでくださりありがとうございます!映画やドラマだなんて恐れ多いですがとても嬉しいです。また更新頑張ります! (2018年10月23日 16時) (レス) id: a5e5b03616 (このIDを非表示/違反報告)
月野(プロフ) - (名前)レンさん» いつもコメントありがとうございます!また更新頑張りたいとおもいます(^_^) (2018年10月23日 16時) (レス) id: a5e5b03616 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月野 | 作成日時:2018年3月23日 20時