【完】ニセモノの恋をはじめましょう JK

２８ ページ28

・





彼女の部屋に入って、それから少し話して、また先輩からの着信。


『もう私は大丈夫だから』なんて言うから帰ることにした。

そんなことを言うくせに、
『もし、怖くなったらよんでもいい？』
『さっきは、行かないでくれてありがとう！』
ってあとからつけ加えるんだから、ビミョーにツンデレだよなあ。なんて思ったけど言わなかった。


歩きながら思った。
今日はストーカーとか色々あったけれど、
前よりぐっと距離が近づいた一日だった。多分。

Aの隣は居心地がいい。

だから、このまま、
このヘンテコな関係が続いたら、もしかして先輩の存在なんて薄れてぼやけて消えていくのかな。

わからない。
よくわからないけど、
とにかく彼女の側にいたい、そう思ってしまうんだ。




ピコン

スマホを見ると
「おそい」って。
そのあとに続く怒ってるうさぎのイラストのスタンプ。


「先輩いまどこ？」

「ばかぐく。駅前のファミレス。」


駅前って言ってもここからいちばん近い駅のことではない。電車に少し長く乗らなくちゃいけない。
先輩はいつだって、俺の大学の最寄り駅ではなく、先輩の大学の最寄り駅付近に呼び出す。

先輩は遠いだなんてこれっぽっちも思っていないし、おれが先輩の誘いを断れないのも熟知してる。



電車の吊り輪に捕まりながら
なんて馬鹿なことばかりやってるんだろうとも思う。


……だけど、どうしてもやめられないんだ。
俺の生活の一部にはいつのまにか先輩が勝手に侵入してて。


いつになったら出ていってくれるんだよ。




こんなの、底なし沼だよ。







ー








「……おまたせ、先輩」


ファミレスのテーブルに項垂れる、長いストレートヘアの女の人に声をかける。
四人用の座席には、沢山の飲みかけのグラスがバラバラにおいてあって、ミルクやシュガー、マドラーも散乱している。






・

２９→←２７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す