【完】ニセモノの恋をはじめましょう JK

２６ ページ26

＊





彼女と付き合い始めて、時間を過ごすうちに先輩と重ねることは少なくなっていった。そして愛着さえ湧いてくるようになった。

たまに、どこか違う世界にいってるみたいな表情をする。何を考えているのか読めない時がある。
そして、本当に俺のことが好きなのかなって思うことなんかも。だって、好きだったら毎日声を聞きたいし、いつでも会いたいって思うのが普通なんじゃないの？おれはそうだから。Aの本心が見えない。だから、興味を持ったんだろう。



普段の自分なら、先輩以外を迎えに行くのは面倒くさいだなんて思うだろうけれど、Aの学校に渋りもせず迎えに行った。
珍しく急に連絡が来たから。しかも平日に。
会いたいとか思ってくれたのかな。
そう思うとすこし嬉しくて、駅から学校まで歩幅を大きくとって歩いた。



学校の入口でAを待つ。
一緒に来て欲しいとこってどこだろう。服屋とか、アクセサリーショップとか？まあ、どこでもいいけど。
前の自分なら、先輩以外は自分が結局いちばんで。友達に誘われても気が乗らなかったらドタキャンとか普通にしてたし、物を買うときは店で見るのが面倒だからほぼネットで済ませてたし。
でも、彼女となら楽しそうかもなんて考えている自分がいて、自分も少し変わったと思った。


『ぐーく！』

笑顔で俺に声をかけた彼女を見て自然と頬も緩んだ。可愛いと思った。
髪型も最近変えて、なんかフワフワしてる。自分ではそう思っていないらしいが話すのもゆっくりで、彼女という存在そのものが柔らかくて、癒されるようだった。



彼女には、"お姫様症候群"のお姉さんがいるらしい。Aも充分可愛いのにずっとお姉さんがいちばんじゃないとダメだって。
びっくりした。どちらかと言うと、俺も末っ子だけど、うちの場合は結構俺の方が甘やかされて、チヤホヤされてきたから。しかも、兄ちゃん自身もすこし年の離れた弟の俺になんでも与えてくれたし、文句ひとつ言わなかったから。だから、想像もできなかった。今までAがどんなつらい思いをしてきたのか。
だけど、なんでもお姉さんがいちばんだなんて考えは、悲しくない？
Aもお姫様だよ。
そう伝えると、笑ってくれた。
いつもの笑顔とは違って、ほっとしたような笑顔だった。




・

２７→←２５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す