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くぐもった声に、幸せすぎて辛い気持ちで胸がいっぱいになった。
ゆっくり腕を回せば、ジミンの背中から熱を帯びた優しい匂いに包まれる。
『……私も、ずっと…好き…』
私を抱きしめる力が少しだけ強くなった。
「……まだ、帰らない…?」
『…うん』
「よかった…」
安堵のため息が不意に可愛いと思えてしまった。
身体が離れると私の顔を見て、鼻を啜りながら嬉しそうに笑った。
「本当は連れていきたい場所があった。…いい?」
頷くと私が手に持つ鞄を持って、行こうと駅の奥に向かって歩き出した。
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「ごめんね、築年数古いからボロボロだけど」
『…お邪魔します』
着いたのはジミンの実家。
何度か遊びに来たことはあるけど、おばさんの家や駅は遠く、着く頃には私も服の色が変わっていた。
思い返せば、遊ぶ時はいつもジミンが迎えに来てくれてて、いつも汗かいてたな。なんて、冷静に考える。
「空気入れかえるね」
むあっと広がるジミンの部屋。
窓を開けると標高が高いおかげか爽やかな風がカーテンを揺らした。
「お茶…しかないけど、平気?」
『…うん』
「待ってて」
部屋から一度出たジミンを見送って、ベッドの手前に腰を下ろした。
引っ越したせいか、ベッドや棚はあってもそれ以外の物は何も無かった。
運ばれてきた褐色のお茶は喉に流すと身体全体がひんやりとした。
人1人分の距離を空けて隣に座ったジミンに目を移せばぱっちりと目が合った。
「…驚かせちゃったよね、ごめん」
『私が先走っちゃったから…』
「Aちゃん、今聞くことか分からないんだけど……7年前のこと、聞いてもいいかな」
『…』
俯くと、風が止み静かな時間が流れる。
『……ジミンのことが、分からなくなっちゃって』
「うん…」
『あのとき、私に沢山好きって言ってくれて、本当に嬉しかった。
いっぱい愛されたような気持ちになれて、本当に…』
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リンゴ酢(プロフ) - ほんっっとにこの作品大好きです😭🫶🏻💕ずっと読んでいたいぐらい文章が素敵で感動でしかないです....💞130号室さんの作品大好きです!これからも楽しみにしています🙇🏻♀️💕 (11月9日 0時) (レス) @page46 id: 5c0db9e802 (このIDを非表示/違反報告)
130号室(プロフ) - mmne08171さん» mmne様読んでいただきありがとうございます😢✨ジミン帰ってきてくれーー😭あと数話ですが最後までお付き合いどうかよろしくお願いします💖 (2022年10月22日 21時) (レス) id: e48cc29190 (このIDを非表示/違反報告)
mmne08171(プロフ) - ジミン…どこ行っちゃったのー泣 すごく引き込まれました✨何とも言えない感情です🥲 (2022年10月22日 11時) (レス) @page40 id: 71162c9e08 (このIDを非表示/違反報告)
130号室(プロフ) - Suzyさん» Suzy様読んでくださりありがとうございます✨大事に大事にと作ってるお話なのでそう言っていただけて嬉しいです😢💖最後までどうかお付き合いよろしくお願いします💐 (2022年10月15日 23時) (レス) id: e48cc29190 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - 切ない···涙出ました。情景が···すごく好きです🌿🥲めちゃくちゃ楽しみです✨🥲🍀 (2022年10月15日 2時) (レス) id: f57ab1c531 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:130号室 | 作成日時:2022年10月1日 0時