あの夏の想い出に、さようなら

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下ろしたての純白のワンピースを揺らしながら歩きやすいサンダルをペタペタと鳴らし、おばさんの家に向かい歩き始める。


今日は今年に入ってから1番暑い日らしい。


まだ着いたばかりだというのに、額がしっとりとしてきた。
一瞬にして電車の中の冷房が恋しくなる。

猛暑日のせいか、ただでさえ人の少ない町なのに、より一層静寂に包まれていた。


この町に私1人しか居ないような空間。


だけどそれは居心地の悪い訳ではなく、凄く不思議な感覚。
何にも言い表せない。良い場所、だなんて抽象的な言葉しか思いつかないほど。


町の人口は数千人。
道を歩けば知り合いが居るようなこの町。

小中学校は一貫性で、高校は町に出ないと無い。
ここで生まれた大半は、この町から出て就職をしている。




『……、』




思わず、暑さからくる疲れから小さくため息が漏れた。

顎まで滴る汗を指で拭い、車が通りもしないのにやけに広い道を歩き続ける。


小さい頃に買いに来た駄菓子屋。
新鮮な野菜を食べさせてくれたおじちゃんの畑。
子猫が日陰に隠れて休憩していたポスト。

どれもこれも、鮮明に覚えている。

1週間前の晩御飯。
職場の先輩が口うるさく言っていた仕事の内容。

あの頃の思い出は覚えているのに最近の記憶こそ曖昧でぼんやりとしか覚えていない。




『…疲れた』




…都会で生きていくのは。









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