30 ページ30
「ええっと……じゃあ、聞くね」
私のパーカーから手を離した轟くんに話を促す。彼は何度か目を泳がせ、口を開いた。
「お前、付き合ってる奴いるか」
「…………えっ」
私もそう鈍感ではない。恋人の有無を聞かれた意味が分からないような、純粋な子ではないのだ。
どうすればいいのだろうか。私には勝己くんとの約束がある。けれども、これから目の前の彼が言おうとしていることを想像してみれば、本当のことを言った方がいいんじゃないかと思えてくる。
言おうか、言うまいか。決して表には出さないように気を付けながら頭の中で百面相をしていると、何も言えない私にしびれを切らしたのか、いきなり轟くんが口を開いた。
「爆豪、なんだろ」
「………………は！？」
思わず大声を出した。なぜ彼がそれを知っているのだろう。
何か付き合いをそそのかすような行動をしてしまったのだろうか。無意識に。
焦りに比例して頭の中は高速回転を始める。先ほどノートを返しに行ったときだろうか。もしかしたら、名前呼びを轟くんの前でしてしまったのかもしれない。
何も答えられず、焦りが顔に出始める。
「……図星なんだな」
やっぱり、と轟くんが呟いた。……ということは、彼の先ほどの言葉は憶測。
つまり―――
「もしかしてカマかけたの！？」
しまった。やらかした。抗議の視線を彼に送るも、それに動じすらしない。さらに、彼はほのかに笑みをたたえて言葉を紡いだ。
「……お前がすきだ」
心の準備はしていなかった。普段表情筋をあまり動かさない轟くんの笑顔とその言葉で、私の顔に熱が集まる。
「……え、えっと、」
「無理にとは言わねえ」
いきなりすぎて答えられない。まあそれが彼らしいと言えばそうなんだろう。けれども私はどうすればいいのかわからず、ただただ目を泳がせるばかりだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼓草(プロフ) - 私の思っているバクゴークンもこんな感じなんですよねかわいかったですありがとうございます何回でも見たくなりますだいすきです（一息） (11月8日 10時) (
レス) @page43 id: a5f127d657 (このIDを非表示/違反報告)
ナイトウルフ - かっちゃんめっちゃ可愛いっ!!!!凄く好みの作品です!!読みやすくて面白くてかっちゃんかわいかったです(((*^^*) (2021年8月30日 20時) (レス) id: 5ed2c2a248 (このIDを非表示/違反報告)
大根 - いや、かっちゃん可愛すぎ！！「悶絶 (2021年7月15日 21時) (レス) id: 28fe3196c4 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 返信ありがとうございます！ないってことにしときます！笑かっちゃんが他の人と…ってちょっと嫉妬しちゃうので^^;笑こんな素敵な作品に出会えてよかったです！！！応援してます！！！ (2020年5月16日 6時) (レス) id: e2145b5dff (このIDを非表示/違反報告)
ひので(プロフ) - さやさん» きゅんきゅんさせたいと思ってかいているのでそう言ってくださってとてもとても嬉しいです…！（かっちゃん、経験あるのかないのかはお任せします……が私はうぶなかっちゃんとても好きです） (2020年5月16日 0時) (レス) id: e50bebed3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
