愛されメイドの備忘録 (ページ50)

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✿✿ ページ50

『すまんな…少し言いすぎたわ』

村上さんも軽く頭を下げると私の手を握ったまま美術館から出た。

結構長く居たのか日は傾いていて、前を歩いていた安田さんは強く照らされていた。

『んふふ、僕の絵の方が全然ドレスに似合ってたやろ〜？』

安田さんは足を止めて振り向くとスマホの画面を私に向けた。

『深海のように深い青色のドレスに包まれた眠る美女…僕はAの寝顔の美しさはこれ以上に美しいって知っとる。けど…僕にはこれが限界…どう？あいつの絵より…上手いやろ？』

スマホ画面に映し出されたさっき安田さんが書いた絵には、瞳を閉じた私によく似た女性が眠っていた。

「とても…お上手です」

『僕以外にAの絵なんて描けへんし、描かせへんよ』

スマホをポケットにしまうと私の顎を掴み上にあげさせた。

『やから…誰にも触れさせたらあかんよ？』

「はい…」

『脅しみたいな言い方したらあかんやろ？』

『脅しやない。約束や』

色つきサングラスを指で直すと安田さんは私から手を離してゆっくりと歩き出した。

『ヤスのキャンパス内は全部妄想の世界』

「はい？」

『そう思っとくんやで』

「妄想…？」

『どれだけ類似してる自分が描かれていても、見た事のある景色や光景が描かれていても。それはヤスの妄想。現実と非現実をしっかりと分かっとくんやでA』

「はい…」

『心配やわ……』

「村上さん…？」

『なんでもあらへんよ。帰ろか〜お腹すいたわぁ…』

私を題材として絵を描いてくれるなんて嬉しいことだと思っていたのに。

村上さんはどこか不安そうに私と安田さんを見つめていた。

あの美しい青色には何が隠れているの？

”
安『あ〜あ』

村『なんやねん笑珍しいやんけ俺の部屋に来るなんて』

安『俺をわざと嫉妬させるなんて酷いもんやで自分』

村『なんの事や』

安『今日あの美術展に俺を連れて行ったのは意図的に…やろ？』

村『んなわけ笑』

安『ほんまはさ…俺が嫉妬に狂ってもっと激しい絵を描いて欲しいんやろ？』

村『俺が？何言うとんねん…笑』

安『綺麗なドレスが淫らに破かれて汚されていくメイドの絵…とか』

村『……阿呆か笑』

安『ほんま…自分だけ優しくして俺を猟奇的な奴だと思わすなんて、酷いわ』

村『もう俺寝んで？笑明日早いんや』

安『ええよ？昔からの友達ってことで描いてあげても。

紫色のドレスが汚されていく絵…

いくら出すか決めといてなぁ』