愛されメイドの備忘録 (ページ49)

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✿ ページ49

『ヤスってこんなに人気なんやな』

「村上さん…幼馴染みの活躍ぐらいは知っておきましょうよ」

『なんとなくは知っとるわ』

「でも…いきなりコラボなんてどうしたんですかね？」

私達は人混みを掻き分けて近くまで向かうと無我夢中に筆を進め、1枚の絵を完成させた安田さんが居た。

『出来た…絶対このドレスにはこの絵が似合うねん』

勝手に絵を変えると安田さんは満足そうに絵を見つめた。

〔安田さん？！な…何してるんですか！〕

『このドレスに似合う女…描いてあげたんやで？』

〔凄いですけど…僕に一言ください！〕

『無理。てか…僕はあんたのこと知らへんし嫌いや』

〔え…？〕

『なんであんたみたいなやつが…』

『ヤス！ヤス！そこまでにしような〜？』

村上さんが駆け寄ると口を手で抑えて男性から離させた。

〔僕は安田さんの絵好きですよ？この女性に恋してる人がこの世に何人いるか…もし出会ったら…〕

男性は村上さんの隣に居た私に視線を落とすと、絵と交互に私を見つめる。

〔まさか…〕

「え…？」

『こいつは関係あらへんよ？なぁ？ヤス？』

村上さんの腕の中で暴れる安田さんは拘束を振りほどくと、とんでもない事を言い始めた。

『俺の絵のモデルは全部ここに居るAや！こんなに美しく絵画の様な女がこいつ以外に居ると思うか？そんなAが…お前の絵が好きって言うたんや…そんなん許されるわけが……』

〔貴方がこの絵の女性なんですね！？まさかお会い出来るなんて…なんとお美しい…〕

安田さんの大暴露に集まっていたファンの人も私の周りを囲んで攻め寄ってくる。

「あ…あの…」

〔もし良かったら僕にも貴方を描かせてください〕

男性が私の手を握ろうとすれば、広い美術館に響き渡った怒号。

『触んな！！』

安田さんの一声に皆静まり返り離れると、村上さんが私の手を引いて離させた。

『彼女はうちのもんなんや…汚らしい手で触らんでもらえるか？』

『はぁ…Aが汚れたらどうすんねん。お前にAを描く権利はあらへんよ』

「お2人とも…少し落ち着いてください…」

一瞬にしてピリついた空気に2人は周りの人達に鋭い目付きを向けていた。

『今度僕も展覧会やんねん…来てなぁ〜』

安田さんは表情を緩ませると手を振ってその場から去っていった。