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友達に戻ったのは良いけれど、たまに透くんが怪我をして来るのが何とも言えないほどに痛々しい


「透くん。無理はしないでね」
「分かってますよ」


そう言って笑う透くんの何かを隠しているような感じだった。それを言っても、どうせ教えてくれない

暫くの間に透くんの口癖になっていた


『子供にはまだ早い』


それは透くんだけでは無かった

秀一も同じように、たまに怪我をしている時があって、それは透くんよりも酷い事があった。心配になって、訊いたけれど、子供にはまだ早い。もう少し大人になったら教える

そんな事ばかりだった

最近、気付いた事があった

透くんはたまに眼鏡を掛けたオジサンと内緒話をしている。その時の表情は喫茶店で俺と話している時とは全く違う表情で、全く笑うような人じゃないんだって思った


「透くん」
「何ですか?」


いつものように来た喫茶店で、透くんを呼ぶと向けられる笑顔。それを信じられない自分が本当に嫌だった

何を信じれば良いのか分からなくて、昴くんにも母さんにも相談したけど、答えてくれなかった


「ねぇ何で教えてくれないの?」
「うーん、Aくんがまだ小学生だからですかね?」


また、そんな言葉で遠ざけようとする


「・・・そんなの関係無いじゃん」
「Aくん?」
「江戸川には教えられて、俺には教えられないのかよ。もう良い」


そう言って、喫茶店から出た

江戸川とは仲良くしてるクセに。そう思いながら、歩いていた


「やぁ、Aくん」
「秀一・・・」


声を掛けられて顔を上げると秀一がいた


「今日は不機嫌だな」
「俺はいつでも不機嫌だよ」
「そうだったかな?」


そう言って、秀一は笑った


「なぁ、何で何も教えてくれないの?」
「君がまだ子供だからだ」
「透くんと一緒の答え」


秀一の返事に嫌気が差す


「・・・君には教えられない」
「何でだよ!!教えてくれても良いだろ!!?友達なんだから!!」
「友達でも教えられない事ぐらいあるだろう?」
「そうだけど、俺だって心配なんだよ・・・ッ」


それを分かってもらえなくて、悔しかった


「・・・もう良いよ。俺に合わせるの疲れるだろ。透くんにも言っといて、俺にはもう合わせなくて良いって」


秀一にそう言って、その場を後にした

呼び止められる声も無視して、出来るだけ足早に自分の家に帰った

もっと別の答えを二人に伝えていたら、何かが、何かを変えられたのかもしれない。お互いが傷付かないような答えがあったのかもしれない

今の俺に分かるのは、もう二人の友達ではいられない事だけだった



終わり

(おまけに続く)

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年10月14日 20時

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