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「君の・・・?」
「そう。あの時、俺が足元に注意しながら後ろに下がれば、枝を踏む事も無く、音も鳴らなかった。犯人に気付かれる事も無かった」


もっと静かに行動出来ていれば、もっと周りに注意を払っておけば、哀ちゃんは危ない目に遭わずに済んだ


「俺がもっと・・・、」
「Aくん」


秀一の声に言葉を切った


「君は考え過ぎだ。確かにそう思ってしまうのも分かるが、君はまだ子供で、大人だってそこまで考えて行動する奴はいない」
「でも、」
「それに君がそんな場面に遭遇する事も予測するのは不可能だ。足元に枝があっても気付かないのが当たり前だ」


俺の声を遮った秀一の声が近くに聞こえた。そして、頭に何かが乗った。それが何かを見ようと頭をそちらに向ける

頭に乗ったのは、秀一の大きな手だった


「君はよく頑張った。よく彼女を守ってくれた。ありがとう」
「しゅ、いち・・・」
「痛かっただろう?怖かっただろう?それでも君はよく頑張った。頑張ったんだから、自分を責めるんじゃない」


頭を撫でられて、秀一が褒めてくれて、優しい言葉を掛けてくれて、自然に止まっていた涙が、また溢れ出した


「それで良い。Aくんは、まだ小学生なんだ。これから強くなっていけば良い。戦う以外に人を守る方法を探せば良い」
「・・・うん。ありがと、秀一」
「これぐらいする。さて、もう休め」


頷いて返すと目元を大きな手で覆われた。眠気はすぐに押し寄せて、意識はすぐに無くなった

目が覚めたのは、次の日のお昼で、流石に秀一の姿は無くて、昴くんが隣にいた。哀ちゃんもいて、何やら話し声が聞こえていた


「おや、起きましたか?」
「起きた・・・」
「顔が酷い事になってるわよ、貴方」
「えっ」


哀ちゃんに言われたけれど、自分の顔なんて見えないし、どう酷いのかも分からない。取り敢えず、体を起こすのを手伝ってもらう


「顔、拭いてあげるから待ってなさい」
「ありがと」


哀ちゃんはタオルを濡らしに行き、ベッドの上で両膝立ちなって、濡れタオルで顔を拭いてくれた


「哀ちゃん、学校は?」
「今日は休日。明日から学校だけど、放課後には来るから」
「来なくても大丈夫だよ?イテッ」


哀ちゃんに負担を掛ける訳にもいかないので、言ったのだが、頬にペチリと哀ちゃんの手が当たった


「退院までは優しくするって言ったでしょ」
「哀ちゃんはいつでも優しいって。俺がもっとしっかりしないと」
「しっかりするのは怪我が治ってからね」


ベッドから下りた哀ちゃんがそう言って、タオルを洗いに行った

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年10月14日 20時

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