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「良い?危ない所に行ってはダメだよ。僕が見てられる訳でもないんだから」
「ワフワフ」


はいはい、と言いたげに返事をされる。Aが賢い犬だとしても、不安は残った。これほどまでに珍しい犬種なのだから、誰かに拐われそうだ

それほどまで弱い犬なのか、と問われれば、ノーと答えるが


「じゃあ、行って来るから」
「ワウッ」


本当に大丈夫なのだろうか。夕方になる前に車に戻っているようにと伝えておいたのだが、分かっているのだろうか

優雅に歩いて行くAの背中を見送りながら、そんな風に思っていた

散歩に行くだけでは足りなかっただろうか

疑問は尽きないが、仕事は待ってくれないので、自分の仕事を始める。とは言っても、重要なのは、今度踏み込む事になっている所の最終確認を風見とするだけだが


「そう言えば、ハロ達とは仲良く出来ているか?」
「え?ああ、はい。ハロくんとは仲良く出来てます。Aくんは、まだ少し距離がありまして・・・」


風見は残念そうに眉を落として、Aとの事を話した。ハロは一緒に遊べる程には仲良くなったが、Aはどうも風見と距離を置いているらしい

オモチャで誘ってみても、欠伸をするか、眠っているかのどちらかだった。Aがオモチャで遊んでいる姿もあまり想像がつかないけれど


「まぁ、咬まれたり威嚇されたりがなければ、大丈夫だろう」
「そうですね・・・」


風見はAとも仲良くなりたいと思っているのか、終始、残念そうにしていた


「話はこれで終わりだ」
「はい。突入時の配置に、変更があれば言ってください」
「ああ。それじゃあ、任せたぞ」
「はい」


話が済み、車に戻る。すると、車の前にAが眠っていた。コツと足音を鳴らすと耳が動いたので、眠っている訳でもないようだ


「A、帰るぞ」
「ファゥウ」
「でかい欠伸だな」


Aの傍で声を掛ければ、大きな欠伸をされる


「散歩はもう良いのか?」
「ワフ」
「分かった。じゃ、乗ってくれ」


車のドアを開けると体を起こして、念入りに体を伸ばしてから、車に軽い足取りで乗り込んだ。自分も車に乗り込む


「楽しかったか?」
「バウッ」
「そうか」


一体、何をしていたのかは分からないけれど、楽しかったらしいので、良しとしよう。犬の考えている事なんて、大した事はないだろう

そう思っていた時もあった

風見と打ち合わせをしていた踏み込む現場に、Aが現れた事に驚きが隠せなかった

Aは僕を守るように、目の前に現れた

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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時

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