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「ワンワンッ」
「もしかして、作ろうとしてる?」
「ワフッ」
「いやいやいやいや、犬の君には無理だよ」
「ウゥ・・・」
唸られても犬には出来ない事だ。人にでも出来ない場合があるというのに、それを犬であるAに出来るとは到底思えない
そもそも犬だ
「君は大人しく待ってなさい」
「クゥン・・・」
Aは台所から足を下ろして、残念そうに床に伏せた。それを横目に見ながら、犬でも食べられるものを作りながら、自分の食事も作った
「待て」
犬用のご飯を作り、目の前に置いた状態で言う。Aは躾られているのか、待ての出来る犬だった
「よし」
食べて良い合図をすれば、ご飯を食べ始める。良い子だ。そう思いながら自分も、手を合わせて食事に手をつけた
「ご馳走様でした」
「ワウッ」
「ははっ美味しかったか?」
「ワン!!」
冗談で訊いたつもりだったが、ちゃんと理解をしているらしく、元気な返事を貰った
「さてと、僕もお風呂に入るかな・・・」
立ち上がると僕の足元に来る。歩行の邪魔にならないように、器用にぐるぐると周りを回りながら、僕について来ていた
「君は外だ。さっき入っただろ?」
「アォン・・・」
「向こうの部屋で待ってなさい」
「ワフゥ」
残念そうに尻尾を下ろし、奥の部屋にとぼとぼと歩いて行った。あんなにも凛々しい犬がしょぼくれながら歩いて行く後ろ姿は、なんだか哀愁を感じるが可愛いものがある
大人しく待っている事を確認して、お風呂に入った。お風呂から上がると、顔を伏せて目を閉じていたAは、顔を上げてこちらを見ていた
それを気にせず、先程の食事の片付けをする。綺麗に食べられている犬用のご飯を盛っていたお皿も回収する
片付けを終え、残っている仕事をする為に隣の部屋に移る。テーブルの前に座ると後ろに温かなものがくっついた
「A?」
「ワゥ」
Aは、背中の辺りで引っ付くように寄り添う。Aの体が僕の体を包んでいるから、風呂上がりで逃げるはずの体温が一向に下がらず、温かいままだった
その温かさに、何故だか、凄く安心したのを覚えている
「・・・そろそろ寝るかな」
一仕事を終わらせ、固くなった体を伸ばす
「寝るから、ちょっと退いてね」
そう言うとAは、僕の後ろから体を離して、退いてくれる。温かさがなくなって、なんとも言えない気持ちが、心のどこかに募った
しかし、それもわずかなもので、僕が布団に入ると、同じように隣に入って来て寝転び、布団の中が温かくなった
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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時