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これは、僕が折れないといけないらしい
「分かったよ。僕の負けだ。ただ、お風呂には入ってくれよ。あと病院にも行くからな」
「ワンッ」
犬は嫌な顔もせず、案内した風呂場に入って行った。そこで、犬を洗う為にベルトと尻尾についている腕輪を外して、外に出しておく
「じゃあ、流すから熱かったら、何か言ってくれ」
「ワフ」
人肌で熱くない程度のお湯を出して、犬にかけてやる。犬は特に嫌がる素振りは見せなかったので、そのまま洗い流した
「これで良し。ちょっと待ってろ」
タオルを風呂場の前に敷いて、その上に移動させる。犬は大人しくしていて、別のタオルで体を拭いた
「ベルトと腕輪は、寝るのに邪魔か?」
「クゥーン・・・」
「つけてほしいのか?」
「バウッ」
つけてほしいそうなので、ベルトと腕輪を元の場所につけてやった。それにしても、綺麗なベルトと腕輪だ。きちんと手入れがされている
「・・・A?」
ベルトにそんな文字が書かれていた
「バウバウッ」
「もしかして、君の名前?」
「アウッ」
犬は頷いて返した
「なるほど。じゃあ、Aと呼ばせてもらうよ」
「アォーンッ!!」
「こら、吠えるな!!」
「クゥーン・・・」
叱ると申し訳なさそうに頭を落としていた
しかし、名前があるのなら、誰かに飼われていた線が再び浮上して来る。捨てられていたにしては身なりが綺麗だ
つい最近まで飼われていたが、何かしらの理由で、この犬はポアロの前に来ていた。ひったくりを捕まえる為に走って来ていたとは考えにくい
「アゥ?」
「何でもないよ。取り敢えず、君は今日からここの住人だけど、ここは僕の部屋だから、あまり騒ぐのはやめてくれよ」
「バウッ」
言葉が分かっているのか、きちんと返事をした
それにしても、何度見ても綺麗な犬だ
「触っても良いかな?」
「ワン」
承諾と捉えて、体に触らせてもらう。風呂上がりのせいもあってか、ふわふわな触り心地だ。首の辺りを撫でてやるとされるがままで、抵抗はされなかった
犬に視線を合わせるようにしゃがんで、抱き締めながら体を撫でる。犬は頭をこちらに寄せながら撫でられていた
犬の体は、とても温かかった
僕が満足するまで、犬は何もしなかった
ただただ僕に寄り添っていた
「・・・ご飯にしようか」
「ワフッ」
体を離して、犬に言えば嬉しそうに返事をされる
「そうは言っても、犬の食べられそうなものなんて、あったかな・・・」
急な住人の増加で、しかも犬だ
「・・・何してるのかな?」
台所に立っている犬に問い掛けた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時