看病 ／ふくら r ページ30
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集合時間から少し遅れて来たAちゃんはどこかぼーっとしていておかしいと思った須貝さんが額に手を当てると熱を帯びているように感じた。案の定、微熱。うだうだ駄々をこねるAちゃんを強制的に帰らせて残りの撮影をなんとか行える範囲で行うとみんなが帰宅する。
最後にオフィスに残った僕は途中のスーパーで食べやすい食料や飲料をカゴの中に突っ込んで購入した。
「Aちゃん、無理させちゃってごめんね」
「ピンポーンくらいは出るよ」
「ありがとう。ところでAちゃんはご飯食べずに何してたの？」
「…………寝てた」
「……はあ。仕事熱心なのはいいけれど今日は治さないとだよ〜？」
僕がAちゃんの家に行くと、むしろ予想通り、仕事のために頭を働かせていた。
明日も仕事があるんだろう。だから、そのために休まないとだよ。
目でそう訴えるとAちゃんは観念したように両手を挙げてリビングへ流れて行った。
「ご飯食べて、僕作ってくる」
「いいよ、移しちゃうし、わざわざ来てくれてありがとう……」
「Aちゃんが心配なんだって、ね」
「……ほんとママだね」
「ママじゃないって」
せめて、と言いかけた言葉はそのまま買ってきた自分のお茶で流し込む。
だめだ、悪ふざけの中だとしても今の彼女の前では下手に嘘もつけない。嘘ではないにしろ焦ったうちはまだ隠しておくべきだと確信した。
簡単なおかゆくらいなら僕にもできる。
それに、風邪の時には味覚がおかしくなるから変な風にならないようにして。
まだあたたかいおかゆをAちゃんの元へ運んで行くと彼女は諦め悪くシャーペンをくるくる回していたのでとりあえずそのままにさせといた。
「ちゃんとできたか不安だけど」
「食べるよ！ ありがとうございます。いただきます」
小さめの、熱が籠らないプラスティックのスプーンを使って食べようとしたAちゃんだが、あちっとすぐ距離を離してしまった。
「ごめん。ふーふーするわ」
「呼吸するのも苦しいから助かる」
「ねえそれ救急車だからね」
ふーと息を吹きかけて冷ましていると気づく。
あれ、ちょっとカップルみたい。
一度意識すると目を合わせることもできなくなるほどなのでそれはまあ置いといて。
無自覚なAちゃんはりんごみたいに頬を赤く染めていかにも辛そうだ。
早くご飯食べて、寝て、元気になってほしいな。
それは僕もQuizKnockのみんなが共通してるおねがいだよ。
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