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下校時刻ギリギリまで居座ったこともあり、この季節の空は夕方とはいえ真っ暗だ。
このまままっすぐ家に帰るでもなく、ふらふらと散歩することになるけれど、少し肌寒いのを感じとってマフラーをしてこなかったことを後悔した。
：
気の向くままに考え事をしながら歩くのももう慣れっこで、時刻は２０時に差し掛かろうとしていた。
小腹がすいて近くのコンビニに立ち寄ったところで、ふと見覚えのある人物がいることに気がつく。
部活帰りであろうジャージ姿のジェシーくんが、お弁当を物色し終わったのか踵を返して、そのまま私と目が合う。
「え！Aちゃんだ」
「……ども、です」
昼休みでもないのに彼と顔を合わせるのはなんだか変な感じだ。
今は一人なのだろうかとそれとなく店内を伺うけれど、他にジャージ姿の人が見受けられることもない。
「俺家近所でさ、今帰る途中なんだけど。Aちゃんは？」
「あー、私も帰る途中、かな」
「あ、そうなの？あれでも部活入ってないんじゃなかったっけ」
「ん、うん」
「……何か買う？それでちょっと散歩しない？」
遅いし、送ってくよ。
遠慮するのも憚られるようなはにかみかたで、彼は言った。
：
具沢山のおでん片手におにぎりを頬張る彼と並んで歩く。
男の子よく食べるなあと驚くけれど、彼ほど体格がよくて運動してきたとなれば普通なのだろう。
何回目かの「家どっち？」をなんとなくはぐらかしたところで、ジェシーくんが足を止めた。
あ、この顔は、ちょっと真剣なことを言おうとしてる時の顔。
「Aちゃんさ」
「……なあに」
「家、嫌い？」
聞かれても困るけれど流石に察しがついていたのだろう。
多分、コンビニで曖昧な答えを返したときから。
あるいは屋上で今まで話した中で、何かをずっと感じとっていたのかも。
「別に嫌いじゃないよ」
「……」
「でも今日は私が帰らないほうがいい日なの」
「ええ、なにそれ」
「大丈夫だよ、両親が寝たあとにちゃんと帰るから」
「だってそれ何時？それまでずっと外に、」
「本当、大丈夫だから。慣れてる」
やめてよ、入ってこないで。
貴方を困らせた責任を、私はきっと取れないよ。
そういう意味も込めて、笑ってきっぱりと言う。
「ジェシーくん、帰ったら？」
こんな風に彼をないがしろにするような言い方は、少し胸が痛い。
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作者名：生駒 | 作成日時：2021年12月18日 23時
