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そんな風に屋上で、先着２人で話をしていたら扉が開く音がした。
入ってきたのは、樹先輩と、もう１人。
さして意外でもない展開だけどまじまじと２人を眺めてしまって。
不意に松村先輩と目があって、思わず、慌てて逸した。
「あっ北斗ぉー！」
隣のジェシーくんが嬉しそうな声を上げて長い腕をブンブンと振った。
先輩２人は可笑しそうに顔を見合わせながら、近づいてくる。
「ほら」
「……、えっと、松村北斗です。三年生、です」
「あ……、和田Aです。一年生です。お邪魔、してます」
「ふは、ぎこちな」
樹先輩に促されるままにぎこちなく挨拶を交わしていると吹き出された。
ベンチに座ったままのジェシーくんと私に、そのままでいいよと軽く言って、ジェシーくん寄りの足元に先輩２人は腰掛けた。
「ねえAちゃん。こいつのこと見覚えない？」
「え」
「おい、いきなり……」
含みのある言い方をしてきた樹先輩を、松村先輩が小突いた。
「……見覚えっていうのは、この前のことではなく」
「そー、もっと前から２人、顔見知りだったみたいよ？」
「ええ……？」
唐突な事に首をかしげつつ、記憶を辿る。
確かになんだか初めて見る気がしなかったような、でも気のせいだとその違和感を流していた。
「顔見知りって程じゃねえよ。俺が知ってて……」
目をふせてボソボソと喋る先輩の顔を、目が合わないであろうことを良い事に改めてよく見る。
「じゃヒント。北斗もAちゃんも、本が好き」
いつものように私が片手に持つ文庫本を指差して、樹先輩が言う。
ついこの前、新たに図書室で借りたものだ。
「……あ」
「お、わかった？」
思い出したと言うよりは、その意味ありげな言い方から半分推理したようなものだけれど。
「……図書室によくいます、よね」
そう問いかければ、松村先輩はこくりと頷いてから小さな声で話す。
「放課後いっぱい図書室に来る人とか、あんまいなくて。だから覚えて、ました」
ああ、そういえばそうだ。
図書室には勉強できるスペースも合って、ちらほら利用している人がいる。
私がよく立ち寄る本棚はそのスペースと近くて、人がいると少し緊張感が伝わってくるものだ。
その一番端の席を、いつも利用している人がいた。
人の少ない場所だから、よく見かける人、定位置が決まっている人のことをなんとなく覚えているのは、多分よくあることで。
松村先輩も、そういえばその１人だ。
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作者名：生駒 | 作成日時：2021年12月18日 23時
