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「Aちゃんのこと、樹話してなかったの？」
「どっちかって言ったらお前が普通話すだろ」
察するに、２人の他にもいると聞いていた常連さんと私は出会って、しかも追い出してしまったのだろう。
微妙にいたたまれない気持ちになって、またすみませんと呟く。
「なあんでAちゃんが謝るの。別に誰も悪くないって」
「むしろ、Aちゃんといきなり２人きりになったらどっちにしろ帰ってたまである」
可笑しそうに、先輩はその人のことを教えてくれた。
松村北斗さん、樹先輩と同じ三年生。
進路が決まるまでは昼休みの時間も勉強に割いていたらしく、ついこの間無事受験を終えたらしい。
超がつくほどの人見知りだけど、感じ悪いやつじゃないからとフォローも交えて。
「あ、でも北斗本好きじゃん、仲良くなれんじゃね？」
無邪気なことを無邪気な顔でジェシーくんが言う。
「そういうものかな」「そういうもんか？」
声を揃えた私たちを見て、ダハ！と豪快に吹き出す彼のツボは浅すぎると思う。
「でもまあ俺も思うよ。北斗とAちゃん気い合いそう」
「……そうなんですか」
「うん、あいつ良くも悪くも考えすぎるやつでさ」
似てる、二人とも。
それもそれで強引な方程式だろうと思ったが、ここで変に否定するのもなんとなく感じ悪い気がして曖昧に微笑む。
彼の目に私はそう映っているのか。
それを聞いて特に何も言わないジェシーくんも、きっとそう。
否定はしない。
良くも悪くも。
好きであり、嫌いな私の個性。
嫌味な役割を着せて、目の前の人をそう表現するような人達では、きっとないだろう。
確かに、「どうぞ」と立ち上がったとき、すれ違ったときのあの人の、伺うような伏せられた目は、私もよくする自覚がある。
自分にも他人にも充分な自信がなくて、条件反射で誰かに席を譲るときの、それ。
根っこの部分で、傲慢さを怖がっている。
(いや、ここまで考えている私、気持ち悪い)
ひねくれすぎな自覚も、ついでにある。
そういうところだよ、と自分で自分に茶々を入れた。
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作者名：生駒 | 作成日時：2021年12月18日 23時
