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『……誰だ?』
窓が開く音の聞こえた部屋に、初老の男が慎重に一歩踏み入った。そこに居た霞む月光に照らされる一人の人物に目を見開いて、「お前は……」と零す。
彼女、Aは自身の叔父であるこの男にクスりと嗤い、「覚えてるじゃないですか」と嫌味を言う。
『お久しぶりです』
『父の葬式以来……ああ、晋助さんとのお見合い以来でしたね』
「あの節はどうも」と口角を上げる彼女を叔父は不気味そうに見てはバツが悪そうに視線を下に落とした。
『驚いてますか?』
『ご覧の通り、まだ生きてますよ』
「今にも死にそうですけどね」と呟くAの口から空咳が出て、苦しそうな呼吸になってしまう。
そんな彼女を見た叔父は、ようやく笑いを漏らした。
『そうかそうか……』
『もう、安静にして帰った方が良いんじゃないか?』
『そうですね……』
『なら、一緒に
「土に」と付け足したAに叔父は、はっと息を飲む。彼女は自分の着物の胸元から包丁を取り出し、切っ先を叔父に向ける。
『……そ、そんなもので俺を殺そうと?』
『ただの刺身包丁だろ』
『それでも、貴方くらい殺せる』
一歩一歩近づくAとは裏腹に、叔父は後ずさった。彼女に迷いは無く、真っ直ぐ在る力全てを注ぎ込むように包丁を握っている。
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時