108.力の発動。 ページ10
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「全軍突撃!!!」
縛虎申将軍の突撃命令に一斉に敵陣に突っ込んで行ったのは、ほんの数分前。その僅かな数分に目の前は大勢の躯と、足元は血の海で染まった。
予想はしていた。戦になればどんな光景が繰り広げられるか。
わかっていたはず。
血が流れない戦などないと。
突撃命令で突っ込んで行った私の班は、敵の槍に貫かれ最早班としての機能はしていない。多くの敵味方が入り乱れ、バラバラになった兵が一人で戦っている状況。
「くらえっ!!」
背後から聞こえてきた声に、握っていた剣で応戦。
乾いた金属音。鍔迫り合いしても力で相手を押し返す事は出来ない。ジリジリと剣で押し返され、喉元付近まで剣先が迫ってくる。
このままじゃ殺られる…!
「…っ」
「死ね!!」
痛みと共に右手の甲に浮かび上がった模様。
剣と盾…?
攻撃と守り…?
止めの一撃を食らわせようと剣を振りかざす敵。その一撃よりも早く男の懐に入りこんで力の限り剣を振り抜いた。
ドサッと倒れる音。
飛び散った鮮血が私の頬を濡らす。
初めて人を斬った感覚は言葉では表現出来ないほど不快なもので、血生臭い匂いが胃を刺激して込み上げる吐き気に、片手で口を覆う。
「到っ!?どこだ到!!信、伍長どこだっ!」
キョロキョロと名前を呼んで誰かを探している男の人の声が聞こえて、視線を向ければその背後には敵の姿。
信…?
信の班の人?
敵よりも早く背負った矢筒から弓と矢を引き抜き、狙いを定める。
外せない。
敵の急所を一矢で狙うためにも。
私の思いに呼応するように再び浮かび上がる右手の痣。
弓を引き、一気に放つ。
「ぐわっ!!」
「な、なんだ!?なんで急に倒れ、」
「大丈夫ですか!」
駆け寄る私に、何がどうなってるんだとパニック状態の男の人は顔面蒼白だった。
「俺を助けてくれたのか…?」
「信の知り合いなんですよね?」
「お前、信の知り合いなんだな?よかった…俺生きてる…っ!」
震える手を握りしめた男の人は、涙ながらに助けてくれてありがとうと泣きついてきた。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時