唯一無二の花嫁。3【キングダム】

君に恋をする。　蒙毅side ページ50

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「おーい、聞こえるか蒙毅」

「………貂…？」


僕の目の前でぱたぱたと手を動かしている貂は「やっと気づいた」と口を尖らす。


「気づいたとは？」

「今までオレが何回お前のこと呼んだと思ってんだ？」

「ああ…すまない。少し考え事を、」

「考え事とは大事な軍議の最中に感心しないな。蒙毅、何を考えていたのか言ってみろ」

「先生それは…。その…。」


上手い言い訳も出来ず口ごもってしまう。そもそも、心の底を見透かすような鋭い先生の視線に、言い訳など無意味だ。


「彼女の…Aさんの事を考えていました」

「やはりな…。」

「え、どういう事？蒙毅も先生もAに会ったことあるのか？」

「前に一度だけあるんだ。兄上に連れられてAさんがここに来たこと」


その日からだ。
僕が可笑しくなったのは…。

大事な軍議の合間もいけないとわかっているのに、彼女の事が気になって。また、僕に会いに来てくれる日を今日か明日かと期待して。

Aさんは僕に気を使って言ってくれただけかもしれないのに…。


「そっかそっか。蒙毅、Aに惚れたのか」

「なっ、何を言って！僕はただ…Aさんの事を知りたいと、また僕に会いに来て欲しいと思っただけで…。」

「それが恋なんじゃないのか？好きだからAのこと気になるんだろ？」

「恋…？」


Aさんの事を思うとドキドキしたり、他の男性と一緒にいるんじゃないかと不安になったり。恋と言うものは、こんなにも情緒不安定になるものなのか。

この感情が恋…。


「先生からも何か言ってあげてよ。軍議にも身が入らず、腑抜けになった蒙毅にさ」

「そうだな」


先生にどんな咎めを言われるかと身を固くする僕に、先生は少しだけ微笑み言葉を口にした。


「あの子は不思議な…人を惹き付ける魅力を持っている。使いようによっては良い駒になるだろう」

「先生…？」

「お前が惹かれるのも、私は分かる気がすると言っているんだ。一度じっくりと彼女とは話しをする必要があるだろう」


どこか楽しそうな先生。
良い駒だと言って、本心は別物なんじゃ…。


再会したいと思う反面、僕は一抹の不安を覚えた。

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