142.愛されている証拠。 ページ44
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「起きろ」
「……ん……あれ、私…?」
目が覚めた私の目の前には上半身裸の桓騎将軍がいた。腕枕をされ抱きしめ……違う。桓騎将軍の鍛え上げられた背に腕を回して抱きついているのは私の方だ。
「え、なっ、何がどうなって!?どうして桓騎将軍が、」
「説明して欲しいのは、私の方なんですがねェ」
聞き慣れた声にガバッと寝台から体を起こした私は、「父上っ!!」と大声で叫んでしまった。それと同時に頭に走る痛み。額に手を当てる私の体を後ろから抱きしめてきたのは、桓騎将軍。
「まだ体が本調子じゃねェんだ。無理するな」
唇をつけて耳元で優しく囁く声。これは夢の途中なんだろうか…あの桓騎将軍が優しいなんて。
「嫁入り前の娘と同じ寝台で夜を明かすとは、覚悟は出来ているんですよね?」
「覚悟…な。聞いた話じゃお前も同じ事をやってるようだが」
「私はいいんですよ。子を可愛がるのは親としての特権です」
父上が両手を広げて「A、私の元に来てください」と私を呼ぶ。その声に応えようとする私の体を、桓騎将軍が行くなと強く抱き締めた。
「あ、あの…。」
「帰したくねェと言ったら、お前はどうする?」
「え、」
「無論、帰してもらいます。大事な娘なんですよAは。それでも帰す気がないと言うなら、私と一戦交えてみますか?天下の大将軍と恐れられた名が、伊達ではないと。その体に教えてさしあげますよ」
口調は穏やかだけど、父上の目は笑っていなかった。私に何かあれば父上は躊躇うことなく相手が誰であろうと手にかける。例え同じ国の味方同士であっても。
愛されていると思う反面、それが怖いとも思ってしまう。
「……行け」
父上と睨みあったままの桓騎将軍が抱き締めていた腕を解き、私の背を押した。
言われたように父上の元へと行った私を「全く、Aには世話をかけられてばかりです」と苦笑しつつも、父上は大きな体を屈めて抱き締めてくれる。久しぶりに触れた温もり。逞しい腕の中。父上の香り。そのどれもが、私にとって安心できるモノ。
私を探してここまで来てくれた父上。
「父上…。」
「帰ったら、寝かせる暇もないほど可愛いがってあげましょう」
甘い言葉に、ゾッとしたのはここだけの話。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時