138.その父親過保護。2 王騎side ページ40
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「―――だよ!止めんな!」
「信…!」
扉の向こうで昌文君が誰かと言い争う声が聞こえた。その勢いのまま扉が開き、童が部屋へと入って来る。
「なっ、何してんだよお前!」
「王騎、王に刃を向けるとは何事かっ!!」
「そう熱くなるほどの事でもないでしょう。話のなかで意見が割れる時もあれば、こうして脅す時もあります。動じる様子がないので、王に脅しは無意味だと判断しましたが」
「ただの冗談ですよ」と笑う私に、昌文君は疑うような眼差しを向けた。
自分の命を賭けてでも守るべき対象の王に危機的状況が迫っているとなれば、昌文君の心中は穏やかでいられないのはわかるつもりだ。
現に今、私がそうであるように。
「信…俺に用があって来たのだろう?」
「お前、Aがこいつのとこに帰ったって言ってたのに、どういう事だよ!」
童にこいつと指をさされ、少し腹が立ったが。何か知っていそうな素振りに、黙って見守る事にした。
「見て分かるように、その事について王騎も俺を訪ねてきた。Aが帰って来ないと」
「なら、テンの言うようにAは…。」
「何か知ってるのか?」
「市で商人が噂してるの聞いたんだと。荷を運ぶ道中で、馬から落馬した若い女を野盗達が連れて行くのを見た奴がいるってな。偶然かも知れねェが、Aがいなくなった日から考えると、」
「野盗などその辺に溢れている。その中からA一人を探すなど不可能にちかいのではないか」
「昌文君。そうとも限りませんよ」
「どういう意味だ?」
「自分で考えて下さい。貴方と遊んでいる時間が私にはないんです」
「なんだと!」
Aの情報が手に入れば、ここに長居は無用。王に向けた矛を戻し、部屋を出ていく私に後ろから呼び止める声。
「お前はどんな気持ちでAに手を出した」
「どんなとは、異な事を聞きますねェ。少なくとも私は好いていない相手を抱くことはしません。あの子も、Aも私と同じ気持ちだと思っていて下さい」
「なんだよ?二人して何の話してんだ?」
「童信には関係のないことです」
「Aが関係してるなら、俺にだって、」
「王……貴方との話合いはいずれまた。Aを奪い返してから、ゆっくりと話をしましょう」
止めた足を再び前へと進ませた。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時