130.言えない。 政side ページ32
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「Aがいなくなった!?……痛っ…!」
俺の一言に寝台から飛び起きた信が痛む脇腹を押さえ顔をしかめた。
「正確には王騎の元へ帰ったんだろう」
「だとしても、俺に何の挨拶もなしでかよ…。久しぶりに会ったってのに。いつの間にか羌瘣の奴もいなくなってるし」
空になった隣の寝台を見つめて信が口を尖らす。
Aの代わりにここを見張るよう任せた兵の隙を見て、羌瘣という刺客は姿を消した。あれだけの手練れだ。ここを抜け出すのは奴にとっては造作もないこと。
信は羌瘣の事を仲間と呼んだいたが…。
それにAも奴の事を知っているような口振りだった。
「なぁ、A何か言ってなかったか?」
「何か、とはなんだ?」
「別にたいした事じゃねェから…。」
俺が何も知らないと思っている信は、「テンの奴どこに言ったんだ」と会話を変えた。
昨日ここでお前がAに自分の思いを告げていた時、その場に俺もいた。俺の存在に気づかないほど、信…お前の目にはAしか映っていないようだったが。
だが、信の気持ちも分からなくはない。
Aに側にいて欲しい、Aを好いているのは俺も同じ。
「何か用がある時は遠慮なく呼べ。お前には貸しがあるからな」
「貸しとか、そんなもんどうだっていい。俺は王である以前に、共に戦った仲間としてお前を助けに来ただけだ」
「そうか…。」
「相変わらず感情に乏しい奴だな」
「俺は元々こう言う顔だ」
「ところで、あの地味な宮女とはどうなんだよ?」
「向のことか?どうとは質問の意味がわからぬが、向とは何もない」
「何も…?一緒に寝てるってのに?」
俺が頷けば、信は驚いた様子。
俺の伽をするべく何度か向を呼んだが、一度も触れてはいない。大人しい性格の向は俺が隣にいてもその場から動くこともせずじっとしてくれる。激務で疲れた体を休める貴重な時間に、静かな場所を提供してくれるそんな存在の向は、俺にとってはありがたい。
世継ぎを望む昌文君達には悪いが。
いや……一番の問題は俺にあるのだろう。
俺が他の女を抱けないのは、Aの存在があるからだ。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時