120.久しぶり。2 ページ22
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「まったく信のヤツ…手伝いもせずどこいったんだよ」
ぶつぶつといない相手に文句を言っている見慣れた小さい体にそっと近づき「わっ!」と後ろから声をかけると、驚いて派手に前へと貂は転んだ。
「なっ何だ!?て、敵かっ!?」
慌てて簑から吹き矢を取りだそうとするが、「ないないっ!あ、家の中だ」と青ざめた貂は涙目。
「オレの命なんか奪ってもなんもいいことなんか、」
「貂、久しぶり」
「……へ?その声…まさか…。」
驚かそうと目深に被っていた頭巾を取ると、大きく目を開いた貂は私の名前を呼んで抱きついてきた。
「Aっ!オレ、お前に会いたかった!」
「私もだよ」
「信と二人だけでずっと心細くて…。会いたくてもAは側にいなくてっ!」
「ほら、もう泣かないで」
ぽろぽろと頬を伝い落ちる涙を指で拭ってあげると「うん…泣いたりしてごめん…」と貂は目元を乱暴に擦り笑った。
「でも、急にどうしたんだよ?」
「もしかして迷惑だった?」
「そんなことない!いい加減信の横暴振りに、オレの拳が火を吹く寸前だったんだ」
細い腕をブンブンと振り回して、こう言う風に、と貂は殴る素振りを見せてくれる。
その力じゃ…反対に返り討ちになっている光景が目に浮かぶ。
「横暴振りって、どんな?」
「聞いてくれるかっ!信のヤツ、魏の戦でちょっと武功を上げたからってオレをこきつかって。身の回りの事を、食事の用意とか家の留守を守ってやってるオレに、感謝の言葉もないんだ!オレはアイツの嫁…でもないのにさ」
「そっか…。大変だったんだね」
よしよしと頭を撫でる私に、「A〜」と胸に甘えてすり寄ってくる貂の脳天に拳が振り落とされた。
「いだっ!なにすんだよ信!」
「俺がいない間にAに手を出してんじゃねェよ。ガキのくせに色気づきやがって」
「いいだろっ!Aは信だけのもんじゃねぇんだ!」
「俺だけのもんに決まってんだろ!」
「信?」
「俺だけのもんだ…。政にも、王騎っておっさんにも、誰にもお前を渡したくねェ」
見つめる私の視線に目を逸らした信の顔は赤くなっていた。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時