116.愛される悦び。1 ページ18
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「A、こっちを向いて下さい」
「……いやっ」
「今さら恥ずかしがることもないでしょうに」
後ろで帯を解く音が聞こえ、父上が身につけている物を脱ぎ捨てているようだった。赤くなった顔を見れられたくない私は、寝台に俯せになったまま。
でも、耳だけは敏感に反応して父上が今どんな格好でいるのか想像できるから、余計に緊張してしまう。
「先程のこと。まだ、怒っているんですか?」
「怒ってない…。怒ってないけど父上があの綺麗な女性と…その…。」
寝台から香る女性物の香り。最近父上が私に冷たくなったのは、あの女性とそう言う関係であるなら納得できる。
「恋人が出来たなら…言って欲しかった」
「恋人…?誰のですかァ?」
私の背中を優しく撫でる父上の手を払いのけ、「惚けないで下さい!」と私は起き上がった。
「何をそんなに怒っているんです?可愛い顔が台無しですよ」
「もう、真面目に答えて!」
逞しい父上の体を凝視する勇気もなく、そっぽを向いて抗議する私の姿に、父上はいつもみたいにココココと笑った。
「人が怒っているのに、」
「怒ってないと言いながら、やはり怒っていたんですねェ。私に恋人が出来たと。それで泣いていたんですか」
「それは…。」
「嫉妬されるのは心地よいものですねェ。相手が尚更好いている人ならば。いつも貴女が他の男達に好意を寄せられ、触れる度に私がどんな気持ちでいるのか。少しは理解出来ましたか?」
「父上が?」
「今私の胸を占めているのは、ただ一人。Aだけです。あの女性とは何もありません。男所帯でAの話相手にでもと思ったんですが、要らぬ心配でしたね」
私の頬を撫でる父上の温かくて大きな手。唇を指でなぞられ、恥ずかしくて身を捩る私を「こっちに来てください」と腕を引かれて抱きしめられた。
「私がAを欲するように。Aにも私を欲してもらいたい」
「父上…。」
「私を満たせるのはAだけです。貴女を愛させて下さい」
父上の熱い眼差し。
父上の甘い言葉。
近づいてくる唇に、私は目を閉じそれを受け入れた。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時