113.押して引く。 王騎side ページ15
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「殿、演習がないのに一人ですか?」
「一人とは…騰貴方も罪な質問をしますねェ」
「Aの姿が見えませんが?」
「あの魏の戦以来。どうやら私はAに避けられているようです」
「それで一人いじけて…いえ、失言でした」
表情を変えず謝られても、反省しているのか全くわからない。
深いため息を一つ。
ここ最近のAの行動を思い出す。
日課のお風呂も一緒に眠ることも、何か都合をつけては私の元から逃げ出してしまう。ならば話だけでもと声をかければ鍛練があると断られ。
流石にそれが何日も続くと、避けられているのだと認めざるをえない。
「避けられる理由はないつもりなんですがねェ」
「殿、年頃の娘が四六時中父親に付きまとわれているのは理由になりませんか?」
「それは一理あるかもしれません」
「では、年頃の娘が父親に裸を見られたうえ、毎晩抱きしめられて眠りにつくのは?」
「……避けたくもなりますか」
騰に指摘され、自分が今までAにしてきた事を考えれば、そう思われても仕方がないのかもしれない。
直ぐ目を離すとフラりとどこかに行ってしまう。その度に知らない男に好かれ、触れられたと思うと、堪らなく不快な気分にさせられる。
手の届く場所に、目の届く範囲に、ずっといてほしい。
「あの、父上…。その、」
何時からそこにいたのか、視線の先にはAの姿。
「Aどうしました?」
何かをいいかけて口ごもるAの頬に手を添えようとするが、それをかわされた。触れることが出来なかった手は空をきり、空しい気持ちになった。
「いえ、何でもないです…!」
顔を赤くしてAは走って行ってしまった。
「殿の心中お察しします」
「はぁ…。どうしたものですかねェ」
「意外と殿は鈍感…もちろん、いい意味で」
「鈍感に良いも悪いもあるんですか?」
何が言いたいのかと騰を見れば、相変わらずの無表情。
「先ほどのAの反応。明らかに殿を意識してます。それも魏の戦の後から。殿、恋に駆け引きは重要です」
「駆け引きです…か」
「押してだめなら引くのも一つの手ですよ」
可愛がるだけじゃなく、時には突き放すことも重要。理解は出来るが、溺愛しているAに冷たい態度をとれるか。
それの方が問題だった。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時