112.気持ちの変化。 ページ14
.
「父上…どうしてここに?」
「ンフ。大事な娘の初陣です。見届けない訳にはいきません」
「殿は丘からずっとAを見ていました。直ぐにでも飛び出して行きそうな殿を止めるのは骨が折れます」
「騰、それは私に対する愚痴ですか?」
「ハ!つい思っていた事を口に出してしまいました」
「それにしてもA。酷い有り様ですねェ?」
「すいません…。」
言い返す事が出来なくて俯く私の体を、父上がそっと抱き締めた。
「心配したんですよ。分かっていますか?」
「はい…。」
耳元に唇を寄せて囁く父上の声が心地よい。父上以上に安心できる腕の中を、私は知らない。
生きていなければ味わうことのできない感情。
「っ…私…生きてるっ…、」
「戦場に出るには武だけでなく、心の強さも必要です。A、強くなりなさい」
ぽろぽろと頬を伝う涙を父上の指が優しく拭ってくれた。
「心配しなくても、Aの側には私がいます」小さな子供をあやすように父上が私の背中を叩く。
「いつもなら子供扱いしないでと怒るのに、今日はしおらしいですねェ。私に惚れてしまいましたか?」
「そんなんじゃ…ない…です…。」
「では、私に抱かれたくなったとか?」
こんな状況でも父上はいつもみたいに私をからかう。そんなことない、ふざけないでよ、と言い返すつもりが今日は言葉が出ない。
「殿…Aのこの反応?」
「ンフフフ。窮地にどこからともなく現れ、命を助けられる事で恋に落ちるのはよくある話です。だとするなら、そう遠くない話かもしれませんねェ。Aが私に抱かれるのも」
背中越しに父上と騰さんの謎の会話が聞こえてきた。
何だかとても眠い…。
体が重くて、自然と瞼が閉じてしまう。
微睡みの中、左手の甲に浮かび上がった模様。
植物の葉…?
不思議と斬られた腕の痛みが和らいだ気がした。
馬に揺られ、背中から私を抱きしめてくれる父上の温もりを感じながら、私はゆっくりと目を閉じた。
そのあと、父上と信が私を巡って一悶着あったと騰さんに聞かされた。
795人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時