55.お礼とお誘い ページ10
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「チッ、何見てんだ!見せ物じゃねぇんだ、どっか散れ!」
私達のやり取りに何事かと人が集まって来る。そうなると分が悪いのは男の方。お婆さんの荷物を引ったくり、挙げ句の果てには子供にまで因縁をつけ、これだけの人達がいる中での犯行なら目撃した人もいるだろう。「警察が来た!」と何処かから聞こえて来た声に、舌打ちをした男は人混みを掻き分けるように足早に逃げて行った。
『全く、謝ってから行きなさいよ』
「あ、あの…助けていただいてありがとうございました。僕一人だけだったら今頃どうなってたか…」
『お婆さんを守ってあげたなんて、偉いね』
ありがとうございますと頭を下げる少年に、つい累にしてしまうように頭を撫でてしまった。癖毛のある髪質は硬そうに見えて、触れると意外にも柔らかい。意外と言うのは失礼かもしれないけど…。触り心地の良さに何度も指で梳いていると、顔を上げた少年の頬がみるみる赤くなっていく。
「どうすればいいんでしょうか…」
『え…、ああ、ごめん!』
「い、いえ…。母上以外の女性に触れられるのは初めてで…」
恥ずかしくてと、少年はまた俯いてしまった。
一言で言って、可愛い。
累とは違った可愛らしさが少年にはある。
「姉さん、いい加減撫でるのやめなよ」
『そ、そうだね』
横から私の手を掴んだ累は不機嫌そうな表情で、目の前の少年を睨みつけた。私のせいで累に睨まれてしまった事には申し訳ないと思いつつ。
『私の名前はA。隣にいるのが弟の累。貴方の名前も聞いてもいい?』
「僕は煉獄千寿郎と言います」
『煉獄さんの弟なんだね。似てる』
「兄に似てますか?」
『うん。似てるよ』
似てるんだ…と、嬉しそうな千寿郎君を見て、きっとお兄さんのこと好きなんだろうなとこっちまでほんわかしてしまう。
「姉さん…さっきからアイツの事ばっか見てる」
『累?』
「僕との時間忘れてないよね?用がないなら行こう」
私の手を引っ張って歩き出そうとする累に、「待ってください」と後ろから千寿郎君の呼び止める声が聞こえた。
「お礼がしたいんです。助けてくれたお礼を」
『お礼なんて、』
「受けた恩は返せと兄にも言われています。僕の家すぐ近くなんです。迷惑でなければご馳走させて下さい。今日は兄も家に帰って来ると言っていたので」
煉獄さんの家に?
断る理由も思いつかず、「付いて来てください」と言う千寿郎君の後を累の手を引いて追いかけた。
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三月の専属ストーカーなつめみく - うあああああいいるいくん救済!!救済だあああ!!やったあああああ!ここのコメント欄の空気ぶち壊していくうううう!!てか面白すぎいいいい!もうね!設定が!神なんよ! (10月24日 9時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - ありがとう〜♪続き待ってるね♪(*⁰▿⁰*) (2022年1月2日 18時) (レス) id: c4dfd681b0 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - アオイさん» アオイさんは多才な才能をお持ちなんですね。絵も描かれ、ピアノまで弾けるなんて羨ましいです。累君のテーマ曲、今度聴いてみたいと思います。更新の準備致しますね。千寿郎君と煉獄さんのお話からになりそうです。その様子に累君ヤンデレ化しないといいですけど(笑) (2022年1月2日 0時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - まぁ、私の話は置いといt((無一「更新頑張ってね」 (2021年12月31日 23時) (レス) id: c4dfd681b0 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - 累君は、ヤンデレも似合うしツンデレでも似合うなぁ〜って思うと、私 顔が真っ赤っかになるですwww.自分で描いた累君を見ると『可愛い///付き合いたい///エンジェルですか⁉あなた⁉』ってよく言ってて 累のテーマの曲をピアノで弾くとギャン泣きにいつもなってる (2021年12月31日 23時) (レス) @page10 id: c4dfd681b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2021年9月28日 20時