期待値ゼロの声を聞くもの。２【鬼滅の刃】

52.犬猿の仲 ページ7

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着慣れない着物に、歩くのも悪戦苦闘。普段は動きやすさを重視した隊服ばかりだったから。髪に挿さった花飾り。薄く紅を引いただけでも、大人になった気がして不思議な感覚。


「冨岡さん、もう少し笑ったらどうですか？いつも仏頂面ばかりじゃ疲れません？」

「別に俺は疲れてなどいない」

「そう言う意味じゃないんですけどね…」


出かける前に善逸達の訓練の様子を確認しようと立ち寄った廊下で、話し声が聞こえて来た。どうやら相手はしのぶさんと冨岡さんみたいだ。


『あの…』

「どうしたのAちゃん。まだ出かけていなかったの？」

『善逸達の様子を見に…』

「あら、残念ね。三人共姿が見えないから、きっとどこかで隠れて訓練でもしてるんじゃないかしら。好きな子に努力している姿を見せるのって、男の子は恥ずかしがるものだから。そうですよね冨岡さん？あ、そもそも冨岡さんは男の子ではありませんでしたか」

「胡蝶、何が言いたい？」

「もしかして冨岡さん怒ってますか？」


ニコニコと優しい笑みを浮かべていても、しのぶさんが冨岡さんに吐く毒は今日も絶好調のよう。淡々と返しに応じている冨岡さんは相変わらずの無表情で、私は二人のやり取りに苦笑。


仲がいいのか悪いのか


「そう言えば炭治郎君達が継子の話をしていたと、耳にしました。Aちゃんも興味があるんですよね？」

『はい…』

「Aちゃんさえ良ければ、私の継子になる手もありますよ。同年代のカナヲもいますし、何より私はAちゃんに興味があります。まだ開花されていない力もあるみたいですからね」

「勧誘するのはやめろ。Aの意思で決めるものだ」

「ですから、私は一つの提案を言ってるんです。まぁ、冨岡さんの所はないと思いますけど」

「……勝手に決めつけるな」


また始まった。
聞いてる側からすれば、終わりのない言い合い。


しのぶさんがカラかって、その喧嘩を冨岡さんが買って。柱同士の内情はよくわからないけど、特にこの二人の衝突は度々目撃することが多い。


「もし仮にAちゃんが冨岡さんの継子になったとして、冨岡さんに意思の疎通って出来るんですか？普段から無口で、何考えてるかわからないのに。嫌われてるって自覚ないのも、」

「俺は嫌われてはいない。何度も言わせるな」


しのぶさんの言葉に被せるように答えた冨岡さん。
嫌われてるという一言に、過剰に反応した。

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