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アルコール度数高め ページ1

いつもはうとうとと眠たいこの時間。水曜日の昼下がり。数学の授業で重力に絆された瞼はとろとろと溶けて下まつげと何度も蕩けるような甘いキスを繰り返す。でも今日は違う。




「よ。」
『先生。』
「今日、地理の時間が化学に変更になってるの皆知ってるやんな?」
『…多分。』
「ん。」
満足そうに頷いて教職員名簿に何やら書きつけている。うつ伏せた長い睫毛に、軽く焼けた小麦色の薄い肌。半袖のワイシャツの袖口からはまだ焼けていない白い肌が目に眩しかった。
(今日もかっこええな…)
こんなにかっこいい顔が毎時間こんな特等席で見られるのだから最初は恨んだ席替えの席も、今となっては神様がくれたプレゼントとしか思えない。



「さーて今日は皆大好き、アルコールやで。」
と、私に冗談めかした顔で楽しそうに話しかける。
『…やめてくださいよ、まだ飲んだことないはずなのに…』
「そりゃそやな!」
なんとも楽しそうな顔で笑う彼が25歳である事は未だに信じていない。彼はテロメラーゼでも持っているのか。つるりとした綺麗な肌に、口元に少し残る剃り残しの髭。高校生にそのままスーツを着せたようだ、と失礼ながらも思ってしまう。
そんな彼はお酒なんて飲めるのか?
同じ事を席が横の友人も感じたようだ。



『先生、お酒飲めるんですか?』
と、聞くと目をパチクリと瞬かせてから目元を窄める。口元は柔らかく弧を描き、人の良さそうな笑みが頬に湛えられる。
「まあ、給料が消える原因の殆どやからな。」
『エンゲル係数高め?』
「そう、んで燃費悪め。」
目を見合わせてくすりと笑い合う。私はその時間が好きだった。柔らかなその時間は洗いたての洗濯物に包まれる時のあの豊かな感情を思い出させた。



『…でも、ちょっと強いアピールしとるけど絶対弱いやんなあ。』小声で友人に笑いかけると、
「お前、2年後覚えとけよ。」
私は今高校三年生。だが早生まれのため17歳だ。
『連れてってくれるんですか?』
「呑めるようになったらな。」
よっしゃ、とガッツポーズしそうになるのを全力で抑え、平然とした顔をする。
「あ、でもお前ちゃんと20歳になってからやぞ?」
『はい?』
「三月生まれやろ、19歳は連れてかれへんからな。」それまで我慢しい。と優しい目を向けられたから、授業の始まりを宣言する彼の声は全くもって頭に残らなかった。

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作者名:まめた | 作成日時:2018年6月23日 20時

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