恋を刻んだ僕たちは、〈Sho,Hirano・Ren,Nagase〉 (ページ36)

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病院を出てすぐ、永瀬に電話をかけた。
２コールで声が聞こえる。

「もしもし、永瀬？」

「おん。」

「今、終わった。これから家に行ってもいい？」

「…おお。ええで、」

「誰か女の人がおるん」

「おらんよ。もう道わかるん」

「うん。すぐ行く。」

永瀬の声は、不思議なほどいつも通りで、それが怖いような安心するような、なんとも言えない気持ちになる。

これから永瀬の家に行って、私は何をしようというんだろう。

永瀬は何も食べていないかもしれないと思い、コンビニで蕎麦と梅のおにぎり、緑茶を買った。

家に行くと、永瀬はまず最初に

「気いつけて」

と言った。

永瀬のその口調や表情から、猫のことを言っているんだと察して私は素早く扉を閉めた。

扉から外へ出ようとした猫が、残念そうに爪を壁で引っ掻いている。

廊下に上がると、数匹の猫が私の足元に絡まって「にゃあ」と鳴いた。

「栗木さん、鼻折れてるって」

「そうか。俺だいぶ強くやったから」

「座ってもええ？」

「うん。」

私は永瀬の対面のソファに座った。座った途端、猫が次々に私に挨拶してきたが、できるだけ触らないように努めた。

ふわふわと柔らかい彼らを本当は撫でたかった。

「栗木さんに聞いたん？」

「何を？」

「猫に触るな、て」

「うん。触らんようにする。私も鼻折られたら嫌やし」

「Aは殴らんよ。」

嘘や皮肉のない永瀬の声。

私はほっと安心して、膝に乗ってきた小さく白い猫の背をそっと撫でた。

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