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「なら、俺、今から取りに行きます。」
「え、ほんまに？」
「うん。Aさんがよかったらやけど。」
「いい、全然。どこにいけばいい？」
「じゃあ…こないだ来てくれた写真展の、駅あるじゃないですか。あそこまで来てください、迎えに行くんで」
彼の一つ一つの言葉に、呼吸が苦しくなった。
電話を切り終えるよりも早く、私は家を飛び出した。
アパートを出てから、肝心の絵を持っていないことに気づいて慌てて戻った。
梱包を外して、額縁をそのまま手で持つ。
何にも隠されず、このまま彼に渡したいと思った。
....
駅に着くと、「平野紫耀」は画廊にいた時と同じように所在なさげに佇んでいた。
やっぱり全身黒くて、でも髪は金色で、雰囲気も何もかもが黒いのに、威圧や支配とは正反対のところに彼はいた。
「平野さん。」
「あ、Aさん。平野紫耀と申します。」
知ってるわ、と言いそうになったが、こういうことを絶対に外さない人と分かったので、はい、と言った。
「公園、近くにあるんで」
駅で絵を渡したら終わりなのかと思っていたから、彼がそう言って改札とは逆の方向に歩き出したとき、私はその場で踊り出しそうなほどだった。
永瀬に今日のことを伝えたい、と思いながら、絶対に言えないだろうとどこかで分かっていた。
「絵、持ちます」
「あ、大丈夫ですよ、そんなに重くないし」
「けど、俺に持っててほしいんでしょ？」
持っててほしい、というのはそういうことではないんだけどな、と思いながら
私は言われるがまま「平野紫耀」に絵を手渡した。
彼が持つと絵はとても小さく見えた。
黒い彼に、金色の額縁がとても似合っていて、もともと会った時からそれを持っていたかのようにしっくりと馴染んでいた。
「この絵、近くで見たらほんまにすごい」
公園でベンチに座ってから、「平野紫耀」は食い入るように絵を見つめていた。
私自身を描いたその絵をいつまでも見つめる彼のことを、いつまでも見ていたいと思った。
「この女の子、Aさんみたい。」
「ほんま？」
「うん。自分ではないん？」
「…ひみつ」
「なんでえ？教えてくれへんの？」
意地悪やなぁ、と笑う「平野紫耀」を、私は直視できなかった。
誤魔化し続けて、何度も聞いて欲しかった。
その絵について、私について。
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ふてぃか(プロフ) - 忙しいと思いますが更新待ってます ！ (2019年8月16日 17時) (
レス) id: 6381a07ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琉叶 | 作成日時：2019年3月24日 1時
