Only you . (ページ27)

今日:19 hit、昨日:3 hit、合計:47,037 hit

side - k ページ27

.

嫌な予感がした。危険を知らせるみたいに、胸の中がザワザワし出す。

『……多分俺も、ズルいよ』

『…愛がなくても、』

『愛がなくても……彼女以外の人とできるの？』

立ち上がり俺の首に腕を絡めた明日香は、そのまま俺に口付けた。

胸のザワザワがぷつりと途切れる。彼女の後頭部に手を回しキスをすると、どちらからともなく舌が絡まる。時折漏れる彼女の声に、体温が上がっていく感じがした。そのまま彼女の服に手をかけると小さく抵抗した。

『……ベッド、』

『…ここでいいよ』

所詮俺も流されやすい、単細胞な男なんだなと思った。その時、一瞬の感情に流されてしまえば、もうそのまま戻れない。

俺の思考回路を停止させたのは、玄関から聞こえた音だった。そこには真っ青な顔をしたAがいて。

『待って、A！』

呼び止めたところで聞いてくれるはずもなかった。電話もラインも、Aから返ってくることはない。

彼氏の浮気に直面した彼女がどんな風になるか、どんな気持ちになるか、すぐそこで見たはずなのに。

俺が一時の感情に流されたがために、Aを明日香と同じ気持ちにさせてしまった。

『…………海くん、』

『………』

『あの、ごめ…』

『……だから言ったじゃん、俺もずるいよって』

男は簡単に浮気する。

愛がなくたってそういう行為はできるけど、Aにするみたいに優しさとかは持てなかった。

結局、俺が好きなのはAだけだった。なんて言っても、信用なんかしてもらえない。それは当たり前の事なんだけど。

『………考えさせて』

Aに触れる手を拒絶された時、一気に絶望感が襲いかかった。でも過ちを犯したのは自分だし、結局自分が悪い。Aが俺を拒絶したがる気持ちもわかる。拒絶されても文句なんか言えない。

Aにあんな顔をさせて、俺は何をしてるんだろう。

－－－私達の６年って、なんだったんだろ

Aも、同じ風に思っているのだろうか。

.